『飲食店 繁盛ダネ!』 その十三

価格はお店が決める、価値はお客様が決める

 先日、会社帰りに「たまには違う店で食事をしてみよう」ということで長崎ちゃんぽんの店に入ってみました。店構えはそれなりに趣があり、年季も入っている感じだったので、店の前を通るたびに1度行ってみようと前々から気にしていた店でした。
 店内は昔ながらの食堂風で、まあ金をかけずに作った古さが良いとはいえないまでも落ち着いた感じのお店です。
 ところがその先がいけません。頼んだビールの一口目がまず「ぬるい」。(言うまでもないことですが、ぬるいビールほど、ガッカリするものはないですネ)さらに、さらにです。出されたビールに付いてきた[お通し]が「もやしの酢の物カレー風味」とでもいうのでしょうか、これが「まずい!」。お通しだから仕方がないとはお客様は誰も思わないことをここの真面目頑固そうなご主人と気の強そうな元気婦人は解からないのでしょうね。たかがビール、たかがお通しではないのです。店の姿勢がこんなにも反映されるものはないのです。お客様は、口には出さなくてもしっかりと店の良し悪しをこれだけで充分判断しているのです。気の弱い私は《食べなければいいんだ》と自分に言い聞かせながら、そっとテーブルの端にそれを追いやったのでした。
 しかし、さらにガッカリが続きます。いいえ、ガッカリではなく、【仰天な出来事】が起こりました。つづけてやってきたツマミが三点、来る品来る品全部にその悪魔のお通しが付け合せというより主役を張るようにタップリ天こ盛だったのです。私の前は、悪魔のもやし畑になってしまいました。「どうしてこういうことができるのかなあ。ボクはいつかこの店に入ってみようとずっと恋焦がれてきて、今日やっとその機会に出合えたのに、この仕打ちは無いでしょう」という言葉もぐっと飲み込んで、皿の端にある本来は主役であるはずのツマミに箸を走らせたのでした。かぼそい声で「ビールもう一本ください。あ、冷えたのお願いします」と注意事項まで添えて頼むボクはなんていい客なんだろうと自分を誉めてはみたものの釈然としませんでした。
 こうなると本当の目的である長崎ちゃんぽんは頼みづらいのですが、目標目的は完遂するものです。敢然とオーダーしたものの、結果は…。玉砕でした。980円のその商品は私には480円の価値にしか映りませんでした。(ここにももやしが…)
 細かいところはいろいろありますが、この店の最も大きな問題は「お値打ち感」にあるのです。CP(コストパフォーマンス)が低すぎるのですね。
 数年前、業種別に同一商品を消費者代表と経営者代表数名に値付けをしてもらったところ200~400円の差が出ました。経営者の方が高い値付けをしたのです。経営を考えると多くの経費に関する考えと原価意識が強くなりすぎてお客様の顔が見えなくなるのです。客層がいい立地にある店ほどお客様の言葉が聞こえてこない(金持ち喧嘩せずです)こともあります。気をつけましょうね。
 さて、次回からはお客様を呼ぶ、そして注文購買していただくための店の機能についてのお話をしてまいりましょう。ではまた。