『飲食店 繁盛ダネ!』 その三五

季節の変わり目は体調を崩しやすいと言われますが、例にもれず、私も風邪をひいてしましました。

これが、長引いたために、かなり気温の上がった今でもハナミズにせきという状態で、「<バカは風邪ひかない>というから、バカじゃないのが証明されたな」とヤマノカミに言ったら、「あたたかくなった時に風邪を引くのは、<夏風邪はバカがひく>っていうのよ!」と言われて絶句した私でした。

・・・というなかで起こったでき事。

商品知識と接客

さすがにノドの痛みが続くと不安になった私は、タバコもやめてアメをなめていたのですが、TVを見ている時、「あ、これがいいや」という商品に出合いました。

コマーシャルの中に出てきたその商品は、ノズルからノドの奥に吹きかけるあのスプレー式の薬です。

「これなら一発で治りそうだ!」私は思いたったら吉日、すぐに近くのドラッグストアに走ったのでした。

店内を探し回ってようやくお目当てのそれにたどりつき、パッケージの説明を見て、「これ、これ、そんなの高くないし、よさそうだ」意気揚々と手にそのスプレー薬を持ってレジカウンターへ向かったのでした。

「これください!」

レジは若い女の子が立っていましたが、どうも雰囲気がよくありません。

下を向いて「いらっしゃいませ」とかぼそい声で接客です。

「目を見て挨拶できない人はダメ人間になっちゃうぞ」と言いたかったのですが、私は気が弱いので、そんなことは言わずに黙って商品をカウンターに置いたのでした。

女性は、その商品を手に取り、レジに数字を打ち込みました。

財布からお金を払おうとしたその時です。

「のどの調子が悪いんですか?」と女性が聞いてきました。

なんだ、気づかってくれたのかなあ、いい子じゃないかと思った時です、驚きの言葉が女性から出てきました。

「その商品TVでCMやってますけど、全然効かないですよ」

「・・・そうなの?」

でも、もうレジ打っちゃてるし、効かないのを嬉々として買いにきたオレはアホかあ、かといって今から違うのをもう一個買うのはいやだし、っていうか、どうして彼女は<効かない>と知っているんだろう、じゃあオレはどうしたらいいんだぁと頭の中をいろいろ考えが廻りましたが、「そうなの、効かないんですか?」とオウム返しで言うのが精一杯でした。

追い討ちをかけるように、彼女は「こういう商品は気休めなんですよ」と言ったのですが、私の返事は、「そうだね、効いてくれたら、儲けもんだね、ハハハ」と。

帰り道、心の中で「これ効かないか、効かないのか、効かないのかなあ、だったら、レジ打つ前に言えよ、それより効かない商品売るなよ」というような声がずっとめぐったのでした。

たぶん、彼女は自分で使用したことがあるのでしょう。

その商品をよく知っているのでしょう。

でも伝え方ひとつで、お客様の心は傷ついたりするのです。

「症状や人によっては合わない方がいらっしゃいますから同時に○○薬もご使用になればいいと思いますよ」ぐらいのことを言ってくれたら、気持ちよくもう一品買って気持ちよく帰ってこれたのにと思ってしまうのです。

まさか皆さんのスタッフの中に「それはあまりおいしくないですよ」なんて、親切におしえている人はいないでしょうね、お~恐~。