石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その六十三

前回も書きましたが、最近B級グルメ通りが東京のあちらこちらで注目を浴びているようです。

安さと気楽さが受けているのでしょう。

その中でも浅草のホッピー通りは群を抜いて存在感を持っています。

先日、見学がてら歩いてみましたが,ファミリー層までちらほら見えるのには驚かされました。

時代は変わるものですね。

この通りを抜けたところに15年ほど前、石田の「ヒットメニューの法則」(ビデオ)にご登場いただいた洋食屋ヨシカミさんがあるのです。

相変わらずお客様がいっぱいで元気元気、やっぱり突出した商品を持っているお店は強いですね。

 

看板商品がある店は強い

ヨシカミの看板商品のひとつ「ハヤシライス」は正にこの店のキャッチコピー[うますぎて申し訳ないっス](昭和35年から「ここまで口に出したからにはそれなりの料理を」という料理人の決意の表れだということです)にうそのない商品と納得させられるものです。

石田はいつも顧問店の皆さんに「商品がまずしっかりしていること、そのための努力は惜しまないこと、そして勢いをつけるためにアピールすること」と耳にタコだと思われているかもしれませんが言い続けています。

それができていない店でも流行っているよというのは業態で流行っているだけですから「寿命が短くなった飲食店」を地で行くことになるのです。

先日、商工会の御依頼があり、新規改装オープンを計画しているお店の指導に行ってまいりました。

売上が下がりつづけ大変な状況の中、起死回生のリニューアルだというのです。

中国料理から気楽なラーメン中華に変えたいということで、その考え方は悪くありませんが、その店で特徴のある商品を作ったので食べてほしいと出されたラーメンを二種類食べた時はがっかりでした。

普通に美味しいのです。

30年前と違い“美味しいのはアタリマエ”の時代ですから、プラスアルファの“何か”がアピールされていないとお客様の心は動かせません。

食べ終わった後「この商品が主力なら今回の投資は無謀です。店を拡張する、綺麗にするのはきっかけでしかありません。総合力の中心は商品です。やり直しですね」と言うしかありませんでした。

いい商品を創るには手間と時間が必要なんですね。

ところでヨシカミさんの「ハヤシライス」ですが、元は日本橋丸善の早矢仕有的(はやしゆうてき)が客をもてなすのに作ったのが始まりとされています。

が、実は有的は医者で忙しかったころ、勤務していた横浜で子供を診察した際、この子供の親(牛鍋屋)に「商売で残った牛鍋の汁と肉をご飯にかけて食べさせれば、滋養もあるし治りも早いだろう」と食事のアドバイスをしたところ、親は即実行、子供は全快(当時の子供は栄養状態が悪く、デキモノや身体の弱い子が多かったようです)、その噂は瞬く間に周囲に広がり、有的も務めていた病院の患者や家族に「牛肉のコマ切れと野菜のゴッタ煮を皿に盛ったご飯にかければ簡単で滋養もあり、美味しいし食器も少なく片付けも楽だからやってごらん」と自ら勧めたのがハヤシライスの始まりだというのがどうやら本当のことのようです。

ハッシュドビーフ+ライス=ハッシュライス=ハヤシライスの説もありますが、こちらはどうも世の中に広がるには説得力に欠けますね。

ハッシュドビーフとは何か、庶民がまだ知らない頃ですからね。