石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その六十五

「あれ、この街ずいぶん変わりましたねえ」

10年ほど前に訪れたことのある街に住む社長から先日初めて呼んでいただいたのですが、久しぶりに訪れたその街を車で送っていただいていた時に発したのが冒頭の言葉です。

10年も経つとその街に必要とされているもの、必要ではないよと言われてしまうものが見えてくるということなのでしょう。

新しい道路ができたり、大型ショッピングセンターが現れたりといった当事者の在り方とは関係ない環境の変化で姿を消してしまうものもあったりしますね。

飲食店も例外ではなくその影響を受けるのは間違いありません。

ましてや客層の変化が著しい現代ではその変化をいち早く掴まなくてはいけないのが飲食店であるかもしれませんから経営者は気が抜けません。

 

『マインド業態は時代のニーズに殺される』

先月、感慨深いニュースが流れました、「すかいらーく」の最後の店であった埼玉県川口市の店が閉店したというものです。

最盛期は726店まで増えたファミリーレストランの草分けですね。

なぜ、消えていかねばならなかったのでしょう。

マインド業態だったからではないでしょうか。

日本の食卓はこの30年で大きく変わりました。

家長を中心としたちゃぶ台の食事から高度成長の車社会を迎え、新しいライフスタイルを持った核家族というニューファミリーが生まれその人々にすかいらーくはぴったりあったのです。

つまり当時からよく言われた(今でも言ってますね)“ニーズをつかめ”を掴んだのですね。

日本中がそのニーズオーラを出していたマインドを飲食店の形にしたということです。

創業者の横川竟さんは残念ながら今は辞任して外側でお仕事をされてますが一時代を作ったという意味では素晴らしい経営者でしょう。

先日お話した時はまだまだ元気で「私にはもっとやる方法があったんだ。事情があってね」なんて、またこれからも事を起こしそうな話しぶりだったのはお元気で何よりと感じました。

ただ時代に追い越されたことに気がつくのが遅かったのは事実です。

女性の社会進出がめざましい時を迎えた80年代後半から90年代は子供が減り、夕食は家族全員が揃わなくなり、個々がそれぞれの食卓を持つようになったのです。

いわゆる個族化が進んだのです。

そしてその個族達の所得が減るに至った今は新たに求められる業態があるのです。

ぴったりハマったのはコンビニであり、ファーストフードではありますが、「おひとりさま」に的を絞った定食屋や立ち飲み屋、中食といわれるデリカ(デパ地下)、低価格弁当店などはまさに今を掴んで出てきた業態と言えるでしょう。

タダシ、彼らもまた時代のニーズに殺される時が来ないとは言えませんね。

いつも油断ならないのが経営なんですね。