石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その九十

「サービスと言うのは、意識の違いなのだな」と痛感したのは、今から十数年前、国鉄が昭和六十二年(1987年)JRに代わって十年目ぐらいの頃でした。

地方に向かうために特急の切符を買った時、案内されたホームが違っていたため、その特急に乗り遅れてしまったのです。

苦情を言った私に対して、その駅員は、それこそ平身低頭、誠意ある謝罪をしてくれました。

それだけでなく、遅れて到着した駅の駅長さんが迎えに出てくれて、「こんな形でしかお詫びできませんが・・・」と言いながらJRのロゴ入りのタオルを差し出してくれたのです。

到着駅にまで連絡がされて対処をされるとは、当時感激してしばらくタオルを机に飾っていたほどでした。

その後のJRは目覚ましい進歩を続けています。

駅中のエキナカを筆頭に充実した設備は素晴らしいものがあります。

先日も足を痛めていた石田は、不自由ながらも駅ではほとんど困りませんでした。

エレベーター・エスカレーターがほとんどの駅に設置されているからです。

(代々木駅さんだけ階段でエラク困ったんですよ、JRさんよろしくです。)

やはり民間に変わったことによる意識の変化が全体のレベルアップになっているのでしょうね。

拡大拡張で図体が大きくなるとレベルの低下が起こるのはよくあることですが、見事に逆転させたのはお手本としなくてはいけませんね。

ところが先日、飲食店で・・・。

 

『これでいいのかの疑問を持つのが進歩』

先日、チェーン店の居酒屋で飲んだ時のこと。

4人で入店、早い5時過ぎくらいだったでしょうか、お客様は1組だけでした。

「座敷がいいんだけど。」

ちょっと考えたような店長はこう返してきました。

「あぁ、予約で埋まっておりまして。」

150席はあろう大箱の店、ホントかよとは思いましたが、了解してテーブルへ。

「お客様、お時間の方は2時間ということでよろしくお願いいたします。」

「へ、こんなに空いてるのに?」

「決まりなものですから。」

最初から気分の悪いスタートです。

4人とも飲食店経営者である仕事柄、こんな対応はいいのかとその話題で始まりました。

2時間はあっという間に過ぎましたが、店はその後入店したのは1組だけ、がらんとした店内です。

我々の一人が通りがかった店長に声を掛けました。

「2時間たつけど帰らなきゃいけないのかな?」

驚きの返事が返ってきました。

「はい、一応。」

その後の我々プロ社長たちがめいめい店長に一言言った言葉はここでは書きませんが、賢明な皆様は想像がつくと思います。

おそらく本部からは「座敷は多人数を優先に、回転を考えて2時間で回せ」というような指示が出ているのでしょう。

しかし、曜日や時間、客足の出だしの感覚で臨機応変に対処できるのが、ホントの店長ではないでしょうか。

本部の指示を守るのが大事なのはわかりますが、本質は「お客さま大事」のはずです。

「先生、違う店で飲み直しましょう。」

そう言って店を出る時、店内は2組、ガラガラでした。

《まだ、けっこう使う、いいお客様を逃してるのがわからないのかなぁ。》

残念に思いながら店を後にした石田でした。