石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その100

直近、二人の有名な方が亡くなられました。

一人は流通評論家の金子哲雄さんです。

金子さんはある業界の講演シリーズで、直接の接点はありませんでしたが、間接的接点があった方だったので、その後もご活躍を気にして拝見していたのでホントに残念です。

飲食業界の専門家ではなかったのですが、飲食業界からの依頼も多かったようで解らない事や想定の裏付けには現場に足を運んで直接お客様の声をリスニングするような努力をもなさっていたようです。

私の好きな俳優の大滝秀治さんも亡くなられました。

大滝さんは俳優になった頃「不器用で声も悪いからお前は無理だ」と裏方に回され、悩まれたようですがひたすら真面目に努力を続け、役をもらうと台本は二つ貰ったそうです。

熟読するのはもちろんですが、休憩の時間も台本を読むのでボロボロになるからです。

そんな努力の結果が“独特の味”と評価されるようになったのですね。

「もうだめだと思ったり、まだまだやれると思ったり」。

大滝さんの言葉ですが深いですね。

努力が十分の一も足りない石田は反省です。

 

『サプライズも他人がやれない努力から』

「この店いいんですよ。先生も聞いているでしょう」。

後輩のコンサルタントから誘われて確かに聞いていた鮮魚中心で流行っているお店に入りました。

ほとんど満席状態の中、女性のスタッフが注文を取りに来ました。

メニューを見た石田は「とりあえず、この三点盛りもらおうかな」。

メニューには三点盛1280円で、刺身の種類が7点書いてあり、石田は好みの3点を告げました。

するとスタッフから驚きのセリフが返ってきました。

「はい、全部つけちゃいますから」。

え、なんのこっちゃ。

怪訝な顔の石田を見て後輩は得意げの顔です。

お前はこの店の社長か?ファンとはこういうものなのでしょうね。

しばらくして運ばれてきた3点盛りはしっかり7点盛りのサプライズでした。

 

「このやり方で繁盛・・もう20店以上になっていまして、仕入れのやり方は・・・最初は30坪くらいの普通の居酒屋で・・会社の理念は・・」

だから、お前は社長か?っつうの、と言うのをグッと抑えて「いやあ、たいしたもんだね。驚くね。また来たくなるね」。

後輩は鼻をヒクつかせて上機嫌です。

贔屓を褒められるとヒトは嬉しいものなのですね。

また彼は他の人を連れて行くのでしょう。

店の宣伝マンです。

店の戦略の勝利です。

ただしこの仕組みを作り上げるのは大変な努力が必要だったはずです。

石田が初めて呼ばれるケースで、[売上・客数は良い方ですが利益が全く出ません]という相談はほとんど価格に見合わない原価をかけている場合が多く、それを補うロス管理や人件費管理、仕入れ管理、交差原価管理に努力が見られません。

サプライズには影の努力が必要なのです。

そういう意味ではサプライズには他にも該当することがあります。

前段の大滝秀治さんの努力の結果が「つまらないと多くのヒトが思う、なんでもないセリフで感動させられた」と語る方がいることでも分かるように、何でもない商品が努力によるブラッシュアップによって他にはない魅力的な商品になることも可能なのです。

ハンバーグ 焼き鳥 とんカツ ラーメン・・・。 

絞って、ひねって、試して、失敗を重ねて、結果サプライズ商品になるなら努力し続けるのは損ではありませんね。