石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その120

出掛けに奥神様からよく声をかけられます。

「これはよろしいのかしら?」

それは携帯電話のことであったり、メガネであったりするのですが、ひどい時には財布や定期入れ、カバンなんてこともあって、我ながら呆れるのを通り越し、もう笑うしかありません。

傘をなくしたのは数知れず、顧問先の社長達と海外視察へ行った時にはパスポートが入ったカバンをベンチに忘れ、見つかった時には奇跡だと笑われる始末。

まだまだボケるのは早いと思っているのですが、なにせ忘れっぽい石田でございます。

「今気がついたとこで、取りに行こうとしたんだよ」

「外ではやたらあちこち物を置かないようにね、すぐ忘れるんだから」

「ちっ、うるせーな。

たとえなくなってもオレは運がいいから必ず戻ってくるんだよ。

それに東京は財布落としてもみんな届けてくれるんだ。

オ・モ・テ・ナ・シの美女が言ってたの、君は知らないの。

それに・・・」

「うざっ、遅れるわよ、行った行った」

 

『忘れることは効率が悪く、生産性が低下する』

「先生、私さっきちゃんと注文しましたよね?」

農水省レストランSAKURAの山本社長がうまい焼肉に連れて行ってくれた時のことです。

「うん、注文してたよ。

ホラあそこの若い男の子だよ」

「ですよね」

大事な話があってそれに夢中になっていたのですが、気がつくと、注文したものが何もきていません。

時間がたってもテーブルの上には箸と取り皿しかありません。

「あいつ、絶対忘れてるよ」

手を挙げて店長らしき男性に注文したものがこないことを告げると、案の定、何も注文は通っていませんでした。

店長がその若いスタッフに確認している様子では、我々の注文は聞いていない、言われていないと言っているようでした。

間違いなく忘れていたのでしょう。

しょうがないなあ、と思いながら食事を始めたのですが、その後、追加の注文をしたところ、またもその彼は忘れてしまったのです。

挙句にスープを運んできた時には社長のズボンにこぼす始末で・・・。

経験不足だとはいえ、お客様には関係ないことです。

新人だという彼のことを語りながら、店長は我々にお詫びサービスで大変です。

おかげで我々はその店のおすすめ品を食べることができたのですが、お店はなんと非効率なことでしょう。

忘れてしまったためにお客様の滞留時間は長くなり、次のお客様を入れられず、遅れた注文を他の注文に割り込ませ、厨房を混乱させ、運びをあわてたためお客様のズボンを汚し、その対応でまたオペレーションが乱れ、挙句に無料のサービス品を提供するという、大きな損失を作ってしまったのです。

お客様に熱い物をかけてやけどを負わせてしまえば、それこそ謝罪では済まないことになります。

新人スタッフが短時間でベテランと同じスキルを身に着けるのは難しいですから、仕事を実践で教えていく過程ではパニックが起こりやすいのです。

長い目で見ればOFF・J・Tが必要だということでしょうね。

余裕や自信ができれば忘れるということも減るものです。

おっと、私の場合は癖ですから、これからも奥神様にご迷惑かけることでしょう。

ではまた。