石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その137

「カレーハウスCoCo壱番屋」のニュースが飛び込んできました。

カレーライスを中心とするメニューを取りそろえたカレー専門の外食チェーンとして、皆さんご存知のこの会社が買収されるというのです。

ちょっと驚きました。

全国に1200店以上を展開するその強さは、2番手とみられる「ゴーゴーカレー」が約70店ですから安泰と思っていたからです。

壱番屋は、営業利益も10%を超えていますし、株式公開も果たしている、言わば優良企業なのにどうしたんでしょう。

調べてみたらどうやら私の思った展開とは違うようでした。

買収相手はハウス食品、元々蜜月関係で原材料の調達や展開の協力を得ていた流れから、19.5%の出資を受けており、今回51%まで、およそ300億円のTOBによる買収でお互いが立場を尊重した形のようです。

よくある窮地に陥った企業の顛末とは違います。

「創業家の鮮やかな引き際」との賞賛の声もあるようです。

 

『経営者は誰よりも仕事をし、承継は自分が信頼する相手に』

店舗展開が始まり、数が増えてくると途端にほころびが見えてくるチェーンをたくさん見てきた石田ですが、ほとんどが社長の「店を見ない」という怠慢が原因です。

いい車に乗り、マスコミに乗せられ派手な生活を公開し、楽しさに一直線で店を忘れるのは、社長のあるべき姿ではありませんね。

壱番屋創業社長の宗次徳二さんは、「ニコ、キビ、ハキ」をキャッチフレーズに店舗を運営してきた方です。

飲食店はいつもニコニコ、きびきびと動き、はきはきと答える、言わば「当たり前」の徹底を重視してこられた方です。

社長ご夫婦はすべての市販カレーを試食し、客数を伸ばすために日々考え続け、休みなく働いてきた創業時の姿を引退まで続けたそうです。

奥さんは子どもを保育園に預けて、迎えにいって寝かしつけたのち、夜な夜な働く日々もあったようです。

店舗巡回は欠かさず、掃除ができていないと、自ら掃除を始めることもあったとか。

店舗が増えてからは早朝に出社し1日に約1000通も届くお客様アンケートにすべて目を通し、コメントつきで店長にFAXしていたということです。

年間5000時間以上を働き、大晦日から元旦にかけて経営目標を立ててから元旦を休んだということですから頭が下がります。

バブル期にも堅実に経営を続け、無駄な経費は全く使わず、時間があれば自社店舗を見て回り、現場の改善にすべてを捧げたのです。

創った店・会社は自分の分身であり、そのあり方に責任をしっかり感じた経営を行ってきたのでしょう。

血縁関係だけで才覚もない身内に継がせて、経営がおかしくなる企業は挙げればきりがありません。

それよりも信頼のおける将来にわたって任せられる相手に会社を渡したのは英断と言えるかもしれません。

保有株は全て売却するそうですから影響力は一切残さないとのこと。

因みに売却益はボランティア活動に投じるそうです。

すごいですね。ではまた。