石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その145

一流のホテルでも、たまに困ったスタッフに出会うことがあります。

数人で海外のリゾートホテルに滞在した時のことです。

フロントでウェルカムドリンクのチケットをもらったので、指定のレストランを見つけカウンターに腰をおろしました。

カウンターの中のその彼は我々が差し出したサービスチケットを一瞥するとウェルカムの言葉も笑顔もなく、テーブルpopを指差しました。

「その中から選べ」という仕草です。

確かに無料の客かも知れませんが、あからさまに、こんな行動を見せられるとイヤーな気持ちになるものです。

それだけではなく、なんと私達の目の前でメニューを手に持ち、さも暑くてめんどくさいが如く、自分を仰ぎ始めたではありませんか。

さすがに「何だ、こいつ!」と声を上げそうになった石田ですが、グッとこらえて注文しました。

それからは、日本語がわからない彼の前で、

「うちの会社の社員だったらクビものですね」

「民度が低いからしょうがないでしょう」

「育ちが悪くて教育うけてないんでしょう」と盛り上がりました。

でも最後は「いつも暑いからしょうがないね。やるき出ないもんね」

「そうそう、気候のせいですよ。この人もこの国に生まれたんだからしかたないやね」

と彼を擁護する、人の良いグループになっていました。

ところが後ろでキャーキャー騒ぐかわいい女性グループの声で皆が振り替えって、「やはり南国の海でのリゾートホテルはいいですねえ」なんて会話をして、ふと顔を戻すと、皆のドリンクが無くなっています。

なんと、かたずけられていたのです。

確かに半分以上は飲んだけど、まだ5分の1、いや4分の1は残っていたはず。

「何だ、こいつ。タダ客は早く帰れってことか?!」

「このホテル最低だな」

「ですよね」とまあ彼のことがホテル全体の評価に及んでしまいました。

【理念の浸透と怠りないチェックを】

なぜ、経営者の見えない場所で、知らないうちに前述のようなことが起こるのでしょう。

それは働く一人一人に使命感が足りないからです。

どんな目的のために仕事をしているのか、目の前の作業にはどのような大切さがあるのか。

それを知らないことに問題があります。

一人一人に全体を背負っている自覚があればよいのですが、簡単にそれが生まれるものではありません。

会社・店がまず社会に対して(お客様に対して)、そして従業員に対して明確な宣言をしていなくてはなりません。

つまり、経営の理念が宣言されていなくてはならないのです。

その理念から考えてそれを外さない社員の行動方針も示されていなくてはなりません。

そして作業一つ一つが方針に合っているかどうかの問いかけが常になされていなければなりません。

問いかけることにより社員は自分で考えるようになります。

言いかえると会社・店が掲げたミッションに常に使命感を持って行動するようになるということです。

チェックをするということはダメを見つけて修正させることが全ての目的と考えないことです。

会社が掲げる理念・方針と合っているかどうかの問いかけのために行っているのだということです。

是非、全社員が経営感覚をもつ会社にしたいとお考えなら参考にしていただければと思います。

ではまた。