石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その153

文学座の名優、杉村春子さんがある対談で、走る演技のコツは「いちばん若い時はアゴで走る・次は胸から・その次は膝から・最後は腰から走る」と語っているのを新聞で読んだことがあります。

「経営者にあてはまるなあ、店を始めた時は、気持ちが先に立って、問題が山積みでも内部管理が不恰好でも突き進み、だんだん胸を張れる体制になり、足元が膝でしっかりしてきたら、腰を入れて次の展開に向かうって感じだろう。

なあ、おいらの例えもなかなかだろう?」

「あら、あなたが走るとお腹からだと思うけど、杉村さんは、お腹については言っていないの?」

「・・・」。

確かに余分な贅肉が付いた状態で走っている経営者もいらっしゃるようですが・・・。

 

【レベルが低い従業員がいると経営は失速する、教育せよ】

たまに経営者からビックリする言葉を聞くことがあります。

経営者としての考えがお粗末な場合と、その社員の言動・行動がおかしな場合です。

先日、続けてそんな場面に遭遇しました。

まず、A店経営者(個人・15坪)の言葉です。

「先生、ポイント制のシステムを導入しました。

お客様がスマホをかざすだけで自然にポイントが貯まり、店はその装置がパソコンと連動しているので顧客管理もできるんです」

「そりゃいいね、毎月かかる費用は?」

「2万円です」

え!?と私は思い、それが単純なリースなのかと聞くと、「いえ、毎月2万円の支払いで7年払いです」という答えでした。

瞬時に石田の頭は、毎月2万円で7年だと総額168万円という数字をはじき出しました。

さらに、支払いはクレジット会社とローンを組んだと聞いて、開いた口がふさがらなくなりました。

1店舗で個人がアルバイトと一緒に、数十人のお客様をこなすような店です。

ポイントカードを作ってスタンプを押すようにすれば、1ヵ月分(2万円)の費用で数年は充分にシステムになります。

顧客管理など、パソコンに打ち込めばたやすいことです。

その装置に現在、何人ぐらいのお客様が登録しているかの問いに50人はいないということでしたから、1人に対して毎月400円以上、管理にお金をかけていることになります。

お話になりません。

自分をチェーン店の社長と勘違いしたのでしょうか?

対費用効果という大事な目線が欠けているとこうなってしまうのです。

次は、店長・幹部の言葉です。

「先月の売り上げは見ていないのでわかりません」

「原材料費率?わかりません」

全く自分が携わる仕事に責任感というものがない人間にありがちな言葉ですが、若手新人ではない店長や幹部から聞くのは稀です。

呆れてその時も声が止まりました。

店に愛情の欠片もないのでしょう。

「材料費率を下げるためには、全品値上げすれば解決ですね」

中学生のような手段をよく簡単に口にするものだと呆れます。

数ある手段を講じても上げざるを得ない状態で、全商品を調査したうえでピックアップした商品を上げるというなら聞く耳も持てますが、いきなり全品値上げを考えもなく持ち出すのは無責任極まるおバカ発言です。

お客様の客足に響いたらどう責任を取るのでしょう。

今度は下げるというのでしょうか?

「FLコストというのは何のことですか?

初めて聞く言葉です」

店長や幹部になるその年まで何も勉強をしていなかった、ただ人手、猫の手として作業をしてきたということでしょう。

また、教えてくれる経営者に出会わなかったのでしょう。

やはり呆れますが、将来困るのは本人でしょう。

「売上を上げるには市内全域と隣の市全域にチラシと割引券を配ればいいんじゃないですか?」

これも対費用効果ということがわかっていない言葉です。

市というのは人口5万人を超えているのが定義ですが、彼が言った市は両市で70万人近くの人口を有します。

20万枚以上のチラシを1回まいてどれだけ店に金を使わせるのでしょう。

バカ発言を平気でしてしまうのは無知のなせる業ですね。

それより目の前のお客様を大切にする手段を考えろよです。

ただ、呆れるばかりでは仕方ありません。

店長・従業員のレベルUPには、経営者自身が成長し、彼らを高いステージに上げる教育を施していかなければなりませんね。

ではまた。