KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』  Vol.85

秋風が吹き始めましたね。

一日一日気温が下がる感じがします。

風邪などひかれませんようお体にお気をつけください。

このところ、夜の街に顧問店の社長と視察に出る日が増えてきました。

先日も関西からやってきた社長が東京の注目の街へ視察に行きたいと言うので、某街へ行ってまいりました。

最近は珍しくなくなってきた呼び込みの姿はいつも通りです。

呼び込みと言えば、以前は風俗店がやっているのをよく見かけましたが、今は居酒屋が普通にやっています。

20ヵ月以上連続で前年比を下回っている居酒屋業界では当然の流れなのでしょう。

そこで呼び込みをやっている若者に取材をしてみました。

「アルバイトさんですか?」

「お客さんを連れていくとどんなご褒美があるの?」等など。

その若者は学生だそうで、お店から呼び込みを専門として依頼されており、お客様を一人連れて行けば500円をもらえるのだそうです。

表でプラプラしながら声をかけ、反応があるお客様を店まで案内をするだけなので、店であれこれ細かい仕事をするより気楽だそうです。

釣りは生ビールが無料だったり、飲み放題1時間〇○○円だったりと店と話し合って決めるそうです。

仲良くなってしまったので、言われるままにその店に入ってみました。

ガランとした店内に先客は4人の会社員グループ一組のみ、おそらく同じく呼び込まれたお客さんでしょう。

引き継いだ店員に笑顔はありません。

「こちらにどうぞ」と案内をしてくれたのはいいのですが、そこは薄暗い店の隅で、先客グループの隣でした。

他にいくらでも空いているテーブルがあるのに何でここ?と思ったものの、勢いに押されて仕方なく席に着きました。

「窓際→壁際→島の席→入り口周辺→パントリー近く→トイレ近く」というような案内の基本などわかっていないのでしょう。

注文を済ませると、まず、飲み物とお通しが運ばれてきたのですが、これを見てびっくり。

小皿に乗ったもやしの胡麻和えで20gもない量です。

これで、価格は500円。

なるほど、これで呼び込みの若者の手当てができるわけです。

計算は成り立ちます。

しかし、計算は成り立っているかもしれませんが、お客様の心の中を掴めているかどうかの想像力は皆無と言わざるを得ません。

こういう店は商品もダメなのが普通ですが、やっぱり・・・でした。

灰皿のような100均皿に乗った料理は評価の外、ひどいものばかりでした。

お客様を力づくで店に取り込む北風手法を敏感に取り入れ、お客様を本当にファンにする太陽手法をないがしろにする店には将来はありませんよね。

我々のサービス業は、接客・商品をどうすればお客様に喜んでいただき、再度足を運んでいただくことができるかを研究追求し続けることが必須であるはずです。

そのかけらも感じることができない店に先はないでしょう。

「人の振り見て我が振り直す、いい勉強になりました」と言って同行の社長は帰っていきました。