コラム

井上奈々子の『食の豆々知識』

2007年6月11日

Vol.37 マンゴー

 近年人気をあげていたマンゴーデザートが、昨年夏に大ブレークし、今年は更に、1ヶ1万もするような高級マンゴーが、毎日のようにマスメディアに登場しています。
  ということで、今回は、マンゴーのお話。

● 今なぜマンゴーブーム?
日本ではもともと植物防疫法により、マンゴーの生果実の輸入は原則として禁止されていました。が、果実の中心温度を47.5℃以上で20分以上加熱するという蒸熱処理により、農害虫の完全殺虫が可能となったため、各国より日本への輸入が許可されるようになったのです。そのため、2006年頃から全国のスーパーなどでフィリピン産などのマンゴーが安価で売られるようになりました。
そして、ここ2~3年、フルーツを使ったデザートが人気を上げていたこと、また、マンゴーのまったりとした甘さが最近の趣向にあったことなどから、フレッシュマンゴーを使用したマンゴーデザートが大ブレークすることとなります。
更に、2007年、宮崎県知事に当選した東国原知事により、宮崎県産のマンゴーが、毎日のようにマスメディアに登場し、ブームを起こしているのは、皆さんご存知の通り。

● マンゴーの王様、輸入開始!
マンゴーの主な生産国は、インド、メキシコ、フィリピン、タイ、オーストラリアなど。日本では、沖縄県、宮崎県、鹿児島県などで栽培されています。
500以上にも及ぶ品種の中で、マンゴーの王様とよばれるのが、インドのアルフォンソマンゴー。デーヴガル産のものが最高だといわれて、実が大きく味が濃いのが特徴です(他は、大きいと味が薄いことが多い)。しかし、生果実の輸入は禁止であり、ピューレやジャムなどの加工品でしか、食することができませんでした。
ちなみに、日本のスーパーでよくみかけるのは、「ペリカンマンゴー」や「アップルマンゴー」。ペリカンマンゴーは、フィリピン産が主で、外観は黄色く、酸味がやや強く、味も香りも淡白なのが特徴。形がペリカンのくちばしに似ていることから、こう呼ばれているようです。アップルマンゴーは、名前の通り果皮が紅色であり、国産マンゴーのほとんどは、この一種であるアーウィン種です。
ところが!昨年、インド産のアルフォンソマンゴーの輸入が許可され、今年、初めて店頭に並びます。王様とよばれるマンゴーの生果実を食べるのが楽しみです。

● 1ヶ\10,000のマンゴーは本当においしいか。
最近話題の、宮崎県産高級ブランドマンゴー、「太陽のたまご」は霧の箱に入って、1ヶ\10,000もしています。ブランド名がついていなくても、国産のマンゴーは、ほとんど1ヶ\2,000以上します。ちなみに輸入のマンゴーは1ヶ\1,000もしません。更に東南アジアなどの現地では、1ヶ\100くらいでマンゴーが買えてしまいます。
  なぜ、そんなに差が出るのでしょうか。
マンゴーは、もともと亜熱帯樹林であり、気温が一定して高くないといけません。また、雨にぬれると受粉しないため、国産のマンゴーは、手間隙をかけて、ハウス栽培をしているのです。そして、その手間隙かけたマンゴーの中で、糖度15度以上、重さ350g以上の特秀な完熟マンゴーが、ブランドとなります。ですから、霧の箱に入っていなくても、1ヶ\5,000以上してしまう高級品となるわけです。
  輸入マンゴーは、輸送に時間がかかるため、完熟の状態では手に入らず、追熟型となります。つまり、完熟マンゴーを食べることができるのは、国産のものだけなのです。
完熟を求め、高価な国産にするか、追熟型の安価なもので満足するか。
 1ヶ\10,000のマンゴーを自分では買う気はないが、食べてみたいと思っている私です。ということで、おいしいかどうか、食べてないからわからないんですね(笑)。すみません…。

● 最後に一応、マンゴーの豆知識。
マンゴーは、抗酸化作用があるβカロテン、ビタミンC、植物繊維、ミネラルなどを含む栄養価の高い果物で、風邪の予防や肌荒れ防止に効果的なほか、ガンや老化防止、糖尿病予防などの効果も期待されています。
トロピカルフルーツは低音に弱いので常温で保存しますが、冷やすと甘みが増してくるので、食べる1~2時間前に冷蔵庫に入れ、冷やすようにします。追熟が早い果物ですので食べごろを逃さないようにしましょう。
また、マンゴーはウルシ科の果物であり、”ウルシオール”という物質が含まれ、かぶれたり、アレルギーを起こしたりすることがありますので注意が必要です。
インターネットで”マンゴーの切り方”で検索すると、写真つきで親切に説明してくれたりもしています。御参考に。ちなみに、食べづらい種のまわりは、しゃぶるのが、正しい食べ方だとか。

 昔、マンゴープリンが流行り始めた頃、とある都内のホテルで出していたマンゴープリンにほれ込み、よく(でもありませんが)食べていました。あるとき、そのマンゴープリンのレシピが雑誌に載っていたため、私はうれしくなって、早速作ることにしました。しかし、できあがったものは、そのホテルのマンゴープリンとは、似ても似つかず。まず、ホテルのは、濃厚な黄色をしているのに、私のは、白っぽい。香りも味も濃厚さにかけ、何か繊維っぽい。腑に落ちなかったことを覚えています。
  しばらくして、そこのマンゴープリンは、当時入手が難しかったインドのアルフォンソマンゴーのピューレを使用していたことを知りました。私はあまり記憶していませんが、ペリカンマンゴーか何かの生果実を使用した気が…。
  今考えれば、品種が違えば、色も味も香りも違いますから、思ったものができなくても当然ですよね。
  今年は、せっかくなのでインド産のフレッシュをつかって、リベンジしてみようかしら。でも、レシピ、のこっていたかなぁ…

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