2004年5月19日
Vol.1 五という数
「陰陽五行説」という言葉を知っていますか。これは中国から伝来した哲学思想で、日本料理の約束ごとは、昔の優秀な料理人がこれに基づいてつくったものであるそうです。
かたくるしいことは抜きにして簡単に私なりに解釈して言えば、“この世のものは全て相対するもの(この場合、陰には陽)から成る”という陰陽説と、“この世のものは全て、5つの性質(この場合は、木・火・土・金・水)が基本となっている”という五行説がくっついた考え方ということでしょうか。
さて料理では、五味(甘・酸・塩・苦・辛)、五色(赤・黄・緑・白・黒)、五法(生・焼・煮・揚・蒸)などの考えがこれにあたります。つまり、これらのバランスがとれた料理が理想的とされるという訳です。
これらのことを説明していく前に、もうひとつ、大切な「五」があります。
皆さんは、「おいしい」ということをどこで感じますか?もちろん舌ですよね。でも舌だけでしょうか。「おいしさ」を感じるのに必要な「五」、それが五感なのです。五感、わかりますよね?視覚、臭覚、聴覚、触覚、味覚です。
バランスのとれた料理が五感を満足させ、五感のバランスがとれたものが「おいしい」ということになるのです。
ある実験と統計によると、「おいしさ」を感じるのは視覚が80%を占め、味覚はたった1%にしかすぎないそうです。目をつぶって鼻をつまんで物を食べると味がわからなかったり、のびきってしまった麺をまずく感じたり、ということなんだろうとは思いますが、それでもそういわれると、レシピをあげるために塩の分量なんかを一生懸命量っている私としてはちょっとなんだか悲しい気分にもなります。
まあ、味覚とは単に、甘い、酸っぱいなどと味を感知するだけで、「おいしい」と感じるのは五感のバランスがうまく働いてこそといえるのでしょう。
ところで「目で食べる日本人、鼻で食べる中国人」という言葉がありますが、上記の実験をしたら中国人は臭覚の割合が1番になったりするんでしょうかね。
おいしさの要因の話をしだすと、環境や健康状態、気候や文化などの話にまでふくれ、話が違う方向へすすんでしまいそうなのでこの辺にしておきますが、何事においても「五」つの性質のバランスが大切なんだということです。
次回は五味、五色などの話をしていきたいと考えております。どうぞ、またおひまな時にでもちらりとこのページに遊びにいらしてくださいませ。
ちなみに、なんで今回この話をしようと思ったかといえば、先日左手の薬指を怪我しました。(まさか、包丁で切って、なんてことは言えません…。)たかが左手の薬指、普段ほとんど使ってないと思いきや、怪我してみると結構使っていたことに気づくんですね。そういえば、なんで指って5本なんだろうと考え、陰陽五行説のことを思い出したのでした…。
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