コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2025年3月12日

Vol.161 胸を打たれた一言

こんにちは。

3月を迎え、まるで急に春がやってきたような気温の日があると思えば、今度は冬に逆戻りと、目まぐるしく変わる毎日に戸惑うばかりですね。

体調には充分お気をつけになって、毎日を頑張っていただきたいと思います。

物価高騰はこれからが本番などというニュースを聞いていると、優しい春が来ることが、なんだか素直に喜べないのは私だけでしょうか。

何とかなりませんかと空に向かって叫んでも、どうしようもありませんね。

店の経営はそんな世情の中でも、お客様が来店いただけるような良い店づくりの努力を重ねなくてはなりません。

良い店づくりには「良いスタッフ」づくりは欠かせません。

今回、そんな「良いスタッフ」に出合ったお話です。

仕事終わりに、いつものように食事をして帰ろうと、いつものスタッフと「前、このあたりに入ったよね」と、半年ほど前に訪れた、寿司居酒屋に入ることになったのでした。

前回は、奥の個室に案内され、静かなひとときが心に残っていたので躊躇なく入店しました。

どこか特別な雰囲気が漂う場所で、美味しい料理を楽しんだことを覚えています。

そのときは、スタッフの方との交流は、ただのアルバイトだろうと思ったので一言二言しか交わさなかったはずです。

席に着き、注文を取りに来たのは、女性スタッフだったのですが、その女性スタッフは驚くべきことに、私たちのことを覚えていてくれたのです。

「お客さん、久しぶりです、お元気でしたか」

その一言に私は胸を打たれました。

前回、初めて訪れた、ただ一度の接客だっただけなのに、なぜか私たちを覚えていてくれたのです。

多くのお客様の接客をしていて、顔と名前を覚えることは決して簡単ではありませんね。

その中で私たちを思い出してくれたことに、驚きと同時に温かな気持ちが湧き上がったのでした。

会話が進むうち、彼女は少し寂しそうにこう言ったのです。

「調理学校に行くことになったので、来月でやめるんです。

料理が好きで、将来はお店を持つのが夢なんです。

頑張っていいお店をやりたいです。」

話をつづけながら目がキラキラしていきました。

それを聞いていて、私は、辞めるということに、少し寂しい気持ちを感じましたが、夢を笑顔で語る彼女になんだか元気を貰っているような気になりました。

「それは、素晴らしい夢ですね。

大変だと思うけど頑張ってください」とエールを贈ったのでした。

彼女が次に進む、その道に心からの応援を送りたかったのですが、同時に「こんな素敵なスタッフがこの店からいなくなる」と思うと、どこか惜しい気持ちも生まれました。

それでも私は笑顔でこう言ったのでした。

「あなたがいるうちに、また来ますね。」

その言葉に込めたのは、応援の気持ちだけではなく、再びこの場所で彼女と言葉を交わしたいという願いも少しありました。

新しい挑戦を応援する気持ちと、気持ちの良い小さな心の交流を一時くれた彼女の気持ちが嬉しかったからです。

店を出る際、彼女の笑顔がとても輝いて見えました。

私も年を取ったのでしょうか、新しい一歩を踏み出すその姿に、なんだか父親のような気持になったようです。

またこのお店に足を運ぶたび、彼女の新たな挑戦を思い出しながら、穏やかな気持ちになるのでしょうね。

たった一人のアルバイトさんでも、お客様を、私のような気持ちにすることができるんです。

ホント、大変ですが頑張りましょう。

お客様の笑顔を創りましょう。

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