コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2019年11月12日

Vol.97 お客様が来ない理由は?

11月に入り、気候は落ち着いてきましたが、各地から台風被害や消費税の影響のこと、キャッシュレスの混乱など、あまり喜べないご報告をいただいています。

皆様のお店はいかがでしょうか。

今回は新しく依頼があった困ったお店のお話です。

その社長から、

「ウチの店は好立地にしてはリーズナブルなお店として、お客様の評判もよく順調だったのですが、今年に入って急激に売り上げが落ちてきました。

何とかしていただきたい」と悲壮な顔つきで話されて面喰いました。

これはもう現場を見るのが一番と、覆面でお店に訪問しました。

すると、この社長が勘違いしていることがわかりました。

まず、外観のチェックをすると、顔である入り口や看板は長いこと点検も修繕もしていない状態です。

店に入るとカウンターは乱雑、迎えるスタッフは無表情に「いらっしゃいませ」を発しています。

お客様への感謝や喜びは全く感じません。

社長曰く「人手がなくて」「外国人なので」とのことでしたが関係ありませんね。

店は高層階なので、景観を楽しめる店なのですが、夜なのに窓にはブラインドが下ろされています。

曰く「昼時、まぶしいので閉めてそのままになってました」

(なんじゃそりゃ)。

喫煙場所を設置してあるのはいいとしても、そこにある灰皿は吸い殻でいっぱい、灰が周辺に散らばっています。

曰く「タバコ吸うスタッフが少ないので」

(そういうことじゃありません)。

メニューはわかりにくい、曰く「料理が来た時に驚きがあると思って」

(わからないものはそもそも頼みません)。

注文は取りに来ない、曰く「座った席が奥だったので」

(じゃ奥にテーブルつくらないで)。

そこそこ高い店なのにスタッフのコミュニケーション能力がない、もう突っ込みどころ満載です。

お客様が安心できる責任者の存在がわからない、曰く「前は店長にベストを着てもらっていたけど、皆が着たいと言い出して、『着れないなら辞めます』と言われたので皆がベストになりました」

(なんじゃそりゃ)。

肝心な商品に関しては、看板メニューを注文しましたが、これがまたボリュームが不足しているばかりか味が強すぎてお世辞にもうまいとは言えません。

社長曰く「料理長が酒のみなので」

(そういう問題じゃないです)。

いやはや、この店が売り上げを落とすのは当然です。

では、なぜ以前は売り上げが良かったのでしょうか。

損益表の数字を見てわかりました。

数十万もの宣伝費を数十万もの宣伝費を毎月かけているのです。

ではなぜ今も宣伝費をかけ続けているのに売り上げが落ちたのでしょう。

一見のお客様は品定めを行います。

宣伝に乗ってご来店されるお客様はその時の評価を胸にお帰りになります。

店に悪い点を親切に教えてくださるということはほとんどありません。

もう来ないだけです。

自店舗を謙虚に点検し、修正の努力をせずに宣伝を続ければ、悪い状態を宣伝し続けていることになるわけです。

宣伝でお客様が来ていることを「評判が良くて」来ていると勘違いしている典型的なパターンがこのお店だったわけです。

今現在、集客に問題がなかったとしても、現状の見直しをすることは大切なことです。

普段はなかなか気づかない問題や改善すべき点を洗い出し、繰り返し改善を行っていくことでリピーター獲得に繋げていきましょう。

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