コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2019年10月8日

Vol.96 張り紙が伝えるお店の本音

こんにちは。

10月に入っても残暑が続いていますね。

おかしな気候になったものです。

体調などは大丈夫でしょうか。

朝晩の気温差の大きい時期。

秋でもインフルエンザにかかることもあるので、免疫力が低下しがちな秋バテには十分気をつけましょう。

先日、訪れたお店でちょっと考えさせられることがありました。

席に着いた途端、一緒に行っていた社長が、「あれ見てくださいよ。どうなんですかね?」と張り紙を指差しました。

その先を見ると、<「おい、生ビール」1,000円、「生1つ持ってきて」500円、「すいません、生1つください」380円(定価)>と書かれています。

どういうことなんだろうと読み進めると、<お客様は神様ではありません。スタッフは奴隷ではありません。

お店にとってスタッフは大切な家族、宝物です。

ご理解とご協力をお願いいたします>とあります。

言いたいことは何となくわかりますが、違和感を抱いてしまいました。

このお店のスタッフはお客様が気を使って、注文をしないとやる気がなくなるのでしょうね。

ちょっと乱暴な言い方をされると、怖くて辞めてしまうのかもしれません。

経営者はそんなスタッフに気遣って、こんな張り紙をして、お客様に注意喚起しているのでしょうか。

それとも、スタッフに対して、『あなたたちを大事に考えているよ』というアピールでしょうか。
または、ウチはこんなに安く提供しているから、ありがたく商品を受け取りなさい、「すいません」と謝りながら頼みなさいよ、ということなのでしょうか。

確かに人手不足の中、スタッフに気を遣う気持ちはわかります。

現場で働いていた自分の経験でも、「嫌なお客様」と遭遇した時はやっていられない気持ちになったものです。

でも、そんなお客様でも気心が知れてきたら、いいお客様になったという場合もありました。

そんな経験をするのも仕事です。

A/Pにはそんな経験させても意味がない、いやな職場とならない配慮だというのかもしれません。

でも、それは現場のお客様を巻き込むことではないような気がするのです。

中には偉そうな態度をとる人もいるかもしれませんが、多くのお客様は「おい、生ビール!」なんて注文はしません。

そんな注文をするのは呼んでもこないとか頼んでも持ってこないことに腹を立てた時ぐらいでしょう。

私はこの張り紙を見た時、なんだか変な輩と同じ目線でお客様を見ているのかと感じて違和感を持ったのです。

嫌な職場にならないようにする手段は、内部で考えるべきではないでしょうか。

そんなことを考えながら、ふと別の張り紙を見たら、<当店はブラック企業のため少人数で営業を余儀なくされております。

行き届かず申し訳ございません>と書かれていました。

どうやら、張り紙は冗談交じり、ジョークツールのつもりなのでしょうね。

ですが、スタッフの方々の対応は笑顔もなくぶっきらぼうで、受け答えもいら立ちが見えるような気がしました。

これでは、何のコミュニケーションツールにもなっていません。

いやはや、もうこの店にはいかないでしょうね。

また、今月もバリバリ健康で頑張りましょう。

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