コラム

井上奈々子の『食の豆々知識』

2018年3月13日

Vol.165 五気六味

まだまだ、薬膳の話が飽きずに続きますが(笑)。

食材は、全て、それぞれに、味だけでなく、性質、効能を持っています。

薬膳では、使用する際に、それらの性質と特徴を使い分けなくてはなりません。

今回は、その仕分けの方の話。

●よく身体を冷やすとか温めるっていうけど?

食材には、身体を冷やす力や温める力を持っているものがあります。

それを「五気」で表します。

五気とは、食材が持っている、「寒・涼・温・熱・平」の性質です。

夏野菜は身体を冷やすと言われますよね。

特にゴーヤやスイカの五気は「寒」。

一気に身体を冷やす食材です。

夏の暑い昼間や、熱があるときはおすすめですが、冬や、冷え性の方には注意が必要です。

きゅうりや、大根、セロリは、「涼」。

「寒」ほど身体を一気に冷やす食材ではありませんが、やはり冷やす食材です。

同じように、身体を温める「温」、更に温め熱を持たせる「熱」があります。

もちろん、これらの差は、どのくらいの効果がある、という数字はなく、「なんとなく」です(笑)。

どちらが、作用が強いか、ということですね。

そしてまた、冷やしたり、温めたりする以外にも、この五気には、働きがあります。

「寒・涼」性には、毒を排泄し、便通をよくする。

「温・熱」性には、痛みを止め、気血の循環をよくする。

食あたりに、ゴーヤの汁を飲ませたり、腰痛に生姜茶を飲んだりするのは、この辺からきている訳です。

●味にも効能がある?

このコラムの本当に初めの頃に、日本料理における「五味」の話をしたように思いますが。

薬膳では、六味で考えます。

「酸・苦・甘・辛・鹹(カン)・淡」。

これらは、味覚というよりも、食材が持っている味のことです。

例えば、甘味は、穀類・果物などがあてはまります。

鹹味は塩辛いというよりは、海苔や昆布など海のものが多いです。

そして、これらにも、また、効用があります。

酸味は、収めるとか固める作用とともに、身体にとって必要な液体と言われる津液を作り出してくれます。

苦味は、熱を取り去り、乾燥させます。

また、解毒作用もあります。

甘味は、調和を取り、補ってくれる食材です。

辛味は、身体を温め、気血の流れをよくしてくれます。

鹹味は、固いものを砕き、和らげてくれます。

淡味は、余分な湿を取り除き、胃腸の働きを促進してくれます。

●昇降浮沈?

そしてもうひとつ。昇降浮沈、つまり、上昇させたり、下降させたりしてくれる食材があります。

「上昇・発散」は、辛・甘の味や、温熱性のもの。花や葉の用は軽いもの。

「下降・泄利」は、酸・苦・鹹の味や、寒涼性のもの、茎・根・貝類など重いもの。

例えば、頭痛などの時は、菊や薄荷(ミント)が使かわれたり、逆流性など、吐き気がするようなときには、苦みや鹹味のあるものが使われたりします。

「食べたものでできている」という言葉がありますが。

食材が持つビタミンや鉄分などの栄養だけでなく、中医学的からみた食材には、更にそれぞれいろいろな力を持っていて、そして、身体を作っていっているんだと、奥の深さを感じます。

まぁ、全ての食材を考えながら毎食なんて食べていられませんから。

基本は、バランスよく食べる、ということが、やはり大切なんですね(笑)。

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