コラム

井上奈々子の『食の豆々知識』

2016年12月12日

Vol.150 きんかん

黄色くて丸くてかわいい果物が並び始めました。

「きんかん」。

うちでは、小さい頃から、おせち料理のひとつとして、必ずお正月には、きんかんの蜜煮が食卓にあがりました。

そのためか、「きんかんは、蜜煮にして食べるもの」という先入観から、生で食べるという考えはなく、2年前に初めて生できんかんを食べ「おいしいっ」と感動したことを覚えています。

今回はそんな、「きんかん」の話。

●きんかんはおせち料理?

きんかんは、黄金色の様子から「金冠」とも書き、富み栄えるようにとの願いが込められています。

きんかんには、小さな卵形のものや、まんまるのもの、長細いもの、または観賞用のものといくつかの種類があります。

生食用として出回っているのは、ほとんど「明和きんかん(または寧波きんかん)」と呼ばれている10g程度の短卵形のもの。

果肉は少し酸味があり、果皮は香りがよく、ほどよい苦みがあり甘いのが特徴です。

最近では、糖度がとても高いものや、皮にほとんど苦みがないものも出てきています。

昔、祖母は、きんかんをお米のとぎ汁で下茹でし、何度もゆでこぼしてから、たっぷりのお砂糖で蜜煮にしていました。

今のきんかんは、ほとんど苦みもアクもないので、ゆでこぼす必要はありません。

お正月料理は、保存ができるように作られていたものですから、きんかんは蜜煮にしたのでしょうが、もしかしたら、当時のきんかんは、今のように生で食べてもあまりおいしくなかったということもあったのかもしれません。

温室や、ハウスもの、露地ものと収穫の時期が変わりますが、旬は12月~3月頃。

おせち料理だけでなく、普段から今の時期に食べたい果物です。

●きんかんは風邪に効く?

きんかんと聞くと、きんかん○○飴が思い出されるほど、有名な飴がありますね。

昔から、民間療法で、きんかんは、風邪の咳やのどの痛みに役立つとされてきました。

そのきんかんの秘密は皮にあります。

かんきつ類にはたくさんのビタミンCが含まれています。

また、ビタミンA、ビタミンEも豊富です。

粘膜を強くし、免疫力をあげてくれるビタミンが豊富ですから、のどの痛みや風邪予防にはうってつけですよね。

でもこれ、ほとんどが皮に含まれているんです。

だから、皮ごと食べるきんかんは、これらを全部摂取できる。

だから、薬効が伝えらえてきているんですね。

また、更に皮には「へスぺリジン」という栄養素が含まれていることも最近の研究で発見されました。

この「へスぺリジン」、毛細血管の強化や血中コレステロール値の改善効果、血流改善効果、抗アレルギー作用、発がん抑制作用などのたくさんの効果が発見されています。

あんなに小さな実に、優れた効能が隠されているなんてびっくりです。

●中医学からみたきんかんは?

薬膳としてのきんかんは、身体を温め、気をめぐらせてくれる食薬です。

胃腸を健康にしてくれ、食欲不振や二日酔い、またストレスからくる胃痛などにも効果があるとされています。

のどの痛みや咳、喘息や、肌の乾燥による荒れなどの効用、また、血流をよくすることも記されています。

これって、上記で研究の結果発表されていることとほぼ同じですよね。

今のような研究がされていない何千年も昔から、これらを薬用として使用してきていたんです。

恐るべし、中医学…。

恐るべし、中国4千年の歴史…(笑)。

と、ここで思ったりして…。

まぁ、なんにしろ、実はきんかんはすごい果物なんです(笑)

ところで、鶏肉にもキンカンって呼ばれるものがあるのを知ってますか?

これは、鶏肉の卵巣、あるいは卵管のことで、卵になる前のものです。

見た目が、きんかんにそっくりであることから、そう呼ばれているんですね。

鶏のレバーときんかんを煮たものがあり、うちの娘が、果物のきんかんと間違って食べてびっくりしていたことを思い出しました(笑)。

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