コラム

石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】

2016年3月7日

その141 もう一度破れ窓理論を店に生かそう

「ウチには、男がいないのかしらね。

電球を変えたり、ちょっと買い物行ってくれたり、洗濯や掃除、簡単な大工仕事までやる旦那様も世間ではいらっしゃるようなのに、あなた、何もできないのね。」

「あ、それ違うから。

できないんじゃあなくて<やらない>のね。

だって悪いでしょ、一生懸命家事をしている君から仕事を取り上げたら、生きがいを取り上げることになるじゃない。

それにボクがやって君より上手だと君の立場がさー・・・」

「・・・バシッ!!」(後頭部に平手打ち)

と、まあ皆様も面倒な家事は奥神様におまかせで見ぬふりして、時々、後頭部に衝撃を受けていらっしゃるのではないかと思うのですが、仕事場である店ではそうはいきませんね。

【もう一度破れ窓理論を店に生かそう】

破れ窓理論という言葉を聞いたことがおありでしょうか?

「建築物のたくさんの窓のうち、1枚の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊され、最後は建築物の崩壊に至る」という考えです。

この考え方を取り入れ、地下鉄の落書きを一つずつ消していくことにより、犯罪の件数を激減させたニューヨークの話は広く知られていますね。

皆さんのお店では、看板が破損のままになっていたりしませんか?

玄関周りが乱雑になっていたり、店内の清掃がおざなりになっているということはありませんか?

最も面倒な仕事が清掃管理かもしれません。

清掃をしたら即売上が上がるというものではありませんが、おざなりにすれば、店の崩壊につながるとするならば、充分な取り組みが必要な訳です。

世界最大の航空業界格付け会社・スカイトラックス社が公開している格付けランキングで、2013年、14年の2年連続“世界で最も清潔な空港”に《羽田空港》が選ばれています。

その栄誉の陰に、ひとりの女性の長年の努力が存在していることをご存じでしょうか。

新津春子さんです。

「97年全国ビルクリーニング技能競技会1位」という経歴はありますが、それよりも彼女の心の持ち様が素晴らしいのです。

清掃員のトップとして、その働き方は綺麗にするだけでなく元の素材が傷つかないように、手の乾燥機・便器などは臭いを気にして分解までして清掃するのです。

なぜそこまでという問いに

「仕事をしている以上はプロですよね。

プロである以上そこまでやんないと。

気持ち、気持ち。

別に誰に言われているわけでもないけど。

でもこうすると全体がきれいに見えるでしょ。

やっぱり、全体をきれいにすると気持ちいいじゃないですか。」

「誰がやったから、じゃないのよ。

キレイですねってお客様が思ってくれる、それで十分じゃないですか。

お客さまが喜んでくれれば、それでいいんです。」

中国残留孤児の彼女は日本に戻った時、日本語が満足に話せず、できる仕事が清掃だったとのこと。

以来20数年明るく楽しく働いているとのこと。

こんな素晴らしい言葉もありました。

「心を込(こ)める、ということです。

心とは、自分の優しい気持ちですね。

清掃をするものや、それを使う人を思いやる気持ちです。

心を込めないと本当の意味で、きれいにできないんですね。

そのものや使う人のためにどこまでできるかを、常に考えて清掃しています。

心を込めればいろんなことも思いつくし、自分の気持ちのやすらぎができると、人にも幸せを与えられると思うのね。」

頭が下がります。

私たちもこんな心で清掃だけでなく、お店をもう一度、見回せたら何か新たなことができるかもしれませんね。

ではまた。

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