2005年2月8日
笑顔の魔法
「サービスの5S」というキーワードがあります。これは、接客・サービスの基本的な実践行動をポイント別に整理した5項目の頭文字を呼ぶのですが、その中の“Smile”について今回はお話したいと思います。
とびきりの笑顔はそれを見たどんな人でも何かしらいい気分にさせることができます。非言語コミュニケーションの基礎でもあり、生まれたばかりの赤ん坊にも伝わるプラスのアプローチ法です。
ある学者が約1,000人の赤ん坊にその母親が笑顔のまま対面し続けた場合と、怒った顔で対面した場合の赤ん坊の反応について実験したところ、明らかな違いが出たといいます。笑って対面した場合には平均して約一分以内に約98%の赤ん坊が微笑んだといい、怒った顔の時には逆に一分以内に96%が泣き出したそうです。この事例からも分るように、人間はもともとプラスのアプローチを受けると心地よくなり、マイナスのアプローチには拒否的反応を示すものなのです。
飲食店での実験の結果もあります。これはアメリカのレストランでの実験ですが、一定期間、同じ従業員に無表情で接客させた場合と満面の笑顔で接客させた場合でのお客様が残していったチップの額を調べてみたのです。結果は笑顔での接客の時の方が無表情の時より約6%もチップが多いというものでした。日本にはチップの習慣がないとはいえ見逃せない結果であることは明らかです。
笑顔にはお客様を気分良くさせたり安心させたりする効果があるだけではありません。飲食店の場面では例えば少々のミスをしてしまってもそのミスを「かわいげ」に変えてしまう場合も多々あります。ミスを許すだけではなく、「かわいいやつだなぁ」と思わせてしまうのですから、すごいパワーです。誤解しないでいただきたいのはミスを犯した際にヘラヘラしなさいと言っているのではありません。いつも笑顔で朗らかなスタッフには往々にしてミスにもかわいげがあるように思われるのです。
また、お客様だけではなく従業員同士の士気にも大いに影響します。和やかで楽しくアットホームな雰囲気を作るのか、とげとげしい雰囲気と環境を作ってしまうのかでは、従業員の定着率や仕事の効率性、店のサービスレベルに雲泥の差がつき、ひいては客数や客単価等にそれが表れてくるのはいうまでもありません。
ただ、どの場合でも言えることは、その笑顔は「心からのもの」でなくては効果が薄いということです。前述のように人間には相手の態度や仕草から好意を抱いているのかそうでないのかが感覚的に分る習性がありますし、プロとして技術的に笑顔をつくれなければいけないということもありますが「つくり笑い」だとほぼ確実にそれが見抜かれ、時に嫌悪感を抱かせる場合もあります。
以上のように笑顔には非常に強力な魔法があるのですが、接客・サービス業に携わる人にとってごく基本的なことであることは間違いありません。仕事前に鏡で笑顔のセルフチェックを義務付けているところもありますが、笑顔をつくる技術と自分の気持ちがお客様に一直線に向いているかを常に自問自答しながら、いつも最高の“Smile”を心がけたいものです。
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