『食の豆々知識』 Vol.10 続砂糖

さて、今回は、またまた塩に続き、砂糖の、甘みをつける以外に調理する上で欠かせない、様々な働きについて、お話していきます。
今回は、塩に続き、最も基本的な調味料である「砂糖」の種類と、その用途に応じた使い方について、お話しようと思います。

① 保水性
砂糖には、水分を保持する働きがあり、これにより乾燥を防ぎ、保存性を高めます。
例えば、すし飯は、砂糖入りの合わせ酢を使うことで、時間がたってもご飯を軟らかく、つやよく仕上げます。
しっかりとしたメレンゲを維持したり、クッキーやバタークリームの酸化を防ぎ風味を保持するのもこの働きによるものです。
また、砂糖漬けなど糖度が高いものは、カビや殺菌の繁殖に必要な水分を吸収するため、防腐作用もあります。

② たんぱく質の熱凝固を遅らせる
砂糖を加えた卵焼きは、たんぱく質の熱凝固を遅らせる効果によって、ふっくらと軟らかく仕上がります。
肉の煮物に砂糖を加えて煮た方が肉が早く軟らかくなるのもこの働きです。
好みや場合にもよりますが、特にお弁当などでは時間がたっても軟らかさが持続するので、砂糖を入れた方がいいようです。

③ 発酵作用の促進
イーストの発酵を促進させ、パンをふっくらと仕上げます。逆に塩はイーストの発酵を抑制するため、イーストが他のものと混ざった後に加えるようにします。

④ 焼き色をつける
よくご存知のことだと思いますが、加熱するとたんぱく質と反応し、きれいな焼き色がつき、香りもよくなります。逆に砂糖が加えてあると焦げやすくなるので注意が必要です。

⑤ 脱水作用
砂糖にも、塩ほどではありませんが、脱水作用があります。くだものなどからは、水分とともに香りと味も引き出すため、果実酒などによく使われます。

ところで、葉ワサビの辛味を出すには、葉ワサビをさっと茹でて密閉容器に入れ30分程おくというのが普通ですが、この時、砂糖をひとつまみまぶすと、葉ワサビの辛味がより際立ち、保持されます。
また、肉や魚の塩漬けの際に、塩だけではなく、10%程度の砂糖を加えると、素材のクセが和らぎます。
このように、砂糖は、上記の働きだけではなく、働き+隠し味としての役割が非常に多い調味料なのです。更に、砂糖は温度によって状態が変化します。この話は、次回にすることに致しましょう。

日本料理「分とく山」の野崎氏のレシピでは、しめサバを作るときに塩ではなく、まず砂糖で水分を抜きます。塩よりも脱水作用がゆるやかなのでその後の調味料がききすぎないという利点があるためだそうです。甘みがつく心配はありません。サバの旨みは残して、まったく臭みは無く、しめサバにありがちな、酢や塩がききすぎることもないので、ぜひ、お試しください。