『食の豆々知識』 Vol.12 醤油

 醤油は、「紫」とも呼ばれます。寿司店や日本料理店で耳にしたことがあるかと思います。これは、高貴な色の江戸紫にあやかってついたもので、このことからも醤油は、日本人にとって大変価値の高い調味料であることがわかります。また最近では、日本だけではなく、世界中でも醤油という調味料が注目されています。

  醤油は、一般的に小麦と大豆を原料に、食塩水を加え、発酵、熟成させて作り上げます。熟成させることにより、大豆に含まれるたんぱく質は旨味とコクとなり、小麦粉に含まれるでんぷんは香りや甘みの素となります。
 つまり、大豆と小麦を主原料としている醤油は、旨味と香りのバランスがとれ、大豆を主原料としている醤油は旨味は強いが香りは弱く、小麦を主原料としている醤油は香りは強いが旨味やコクは弱い傾向にあるといえます。
 また、塩分を増やしたり、低温にすることで発酵、熟成を抑え、色を薄く仕上げます。ですから、色の薄い醤油は、発酵、熟成の度合いが少ない分、旨味が少なく、また、旨味が少ないことで、もともとの塩分よりも更に塩味を強く感じるようです。    
 
  原材料や製法の違いにより以下のように分類されます。
① 濃口醤油
醤油生産量の8割を占め、一般に醤油というとこれを指す。銚子や野田市が産地としては有名。色が濃く、香りがよいのが特徴。塩分は16~18%程度で、あらゆる料理に使われている。
② 薄口(淡口)醤油
醤油生産量の15%を占め、兵庫県龍野地方が主産地で、西日本を主に使われる。薄い色をだすため塩分濃度を高め、もろみに甘酒を加えている。色が薄く、香り、味ともあっさりしているのが特徴で、野菜や白身魚など素材の色と持ち味を生かす料理に向いている。塩分濃度は濃口よりも2%ほど高い。
③ たまり醤油
大豆が主原料で、小麦はほとんど使われず、熟成したものに火入れをせずに製品化される。味は濃厚だが香りは少ない。とろりとした濃度が特徴。豆味噌同様、愛知、岐阜、三重が主産地。刺身醤油や、加熱するときれいな赤身、ツヤがでるため、たれや煮物の照りをつけるのに用いる。
④ 白醤油
たまりとは逆に、小麦を主原料とし、大豆はほとんど使われず、これもまた発酵させたものに火入れをしない。薄口醤油よりも更に色が薄く、旨味やコクは少ないが、独特の麹の香りがあり、また糖分も高い。
⑤ 再仕込み醤油
濃口醤油の一種で、「甘露醤油」ともいう。麹に、食塩水を加える代わりに生醤油(火入れをしていない醤油)を使い、二度醸造するような形でつくるため、再仕込みと呼ばれる。濃厚な色、香り、味が特徴。これも刺身醤油としても使われ、煮物や香り付けに用いられる。

 ところで、原料の大豆には「丸大豆」と「脱脂加工大豆」があります。丸のままの大豆には多量の油が含まれているので、醤油を搾る工程で油を取り去らなくてはなりませんが、あらかじめ油を取り除いておいた脱脂加工大豆ならその工程は必要がありません。最近は「自然」という印象をあたえる丸大豆に人気が出てきていますが、今でも主流は脱脂加工大豆のようです。
 一般に「脱脂加工大豆」でつくられた醤油は「香り立つキレのある味」を特徴とし、「丸大豆」を用いてつくられた醤油は、「まろやかさ」「重厚な風味」が特徴であるといわれています。

 次回は、醤油の特性や、上記以外の醤油の種類をお話する予定です。
ちなみに、東では「醤油はキッコーマン(野田)」、西では「醤油はヒガシマル(龍野)」といわれていた理由がおわかりになりましたか?