『食の豆々知識』 Vol.13 続醤油

 さて、前回は、原料や製造法の違いにより分類された5種類の醤油を紹介いたしました。今回は、それ以外のよくみかける醤油についてと、醤油の働きにふれてみようと思います。

<魚しょうゆ>
 魚類やその内臓を塩漬けし、酵素で発酵させてつくった醤油風調味料。材料のたんぱく質からアミノ酸が生成され、独特のにおい、旨味があります。秋田の「しょっつる」や石川の「いしる」などが例にあげられますが、それよりも最近では、アジアの調味料として「ナンプラー(タイ)」や「ニョクマム(ベトナム)」の方が身近になってきています。ものによって塩分濃度は違いますが、基本的には高めです。

<低塩醤油>
 消費者の健康志向の高まりから、最近では塩分の少ない醤油のニーズも増えています。
 低塩醤油は、塩分が通常の50%以下である減塩醤油と80%以下であるうす塩(あさ塩、あま塩)醤油に分けられます。基本的には、普通の醤油から塩分をカットし、酢や旨味などで味を補ってつくられます。よく、「薄口醤油と減塩醤油って何が違うの?」という声を耳にしますが、まったく違うものです。
 ちなみに、「あまくち」醤油、「うまくち」醤油というものもあります。「あまくち」は九州地方の志向に合わせて甘くつくられた醤油のこと。「うまくち」は東北地方を中心に販売されている旨味を加えた醤油のこと。これもまた、どちらもまったく違うものです。

<アレルギー用醤油>
 現在乳幼児の4人1人はアレルギー体質であるいわれています。そこで、最近注目され始めたのが、米醤油、粟醤油、ひえ醤油、キビ醤油などです。原料となる穀物から作っているため、普通の醤油と比べると、白醤油に似て、色は薄く、旨味、コクが少なく、甘味があります。また、キヌア醤油というものもあります。これが個人的には、色、味とともに一般的な醤油に一番近いのではないかと思います。

 醤油は日本のさまざまな料理に使用され、つけて、またはかけて食べるということも少なくありません。そのため、上記のような低塩やアレルギー用の醤油を持ち歩いている方もいらっしゃいます。「調味する」という意味では必要のないものではありますが、生活習慣病やアレルギー体質が増えている現在、家庭だけではなく外食産業においても調味料を見直していかなくてはいけないのかもしれません。

 ところで、一般に醤油の塩分濃度は海水の5倍以上あるのですが、なめた時の塩からさはそれほどでもありません。
 それは、醤油の原料である大豆や、小麦粉が熟成過程においてアミノ酸に変化し、糖分、有機酸などと互いに働きあい、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味のバランスのとれた醤油独特の味をつくりだしているためです。ですから、同じ塩分を加えた場合、塩よりも醤油を加えた方が、まろやかに仕上がるのです。
 また、醤油の食欲を刺激する独特の香りには、魚や肉の生臭みを消す作用が強くあります。日本料理で幽庵地(酒、醤油、味醂を合わせたもの)に漬け込んで焼くという調理法は、漬け込む素材の生臭さを消し、醤油(酒)の香りを生かすという、理にかなったものだということがわかります。
 醤油にはこの他の働きに、塩分が高いため、塩と同じように、脱水作用や、防腐作用もあります。

 醤油については、今回で終わりです。醤油単体としての生産量はここ近年、頭打ちにあるようですが、醤油をベースにした加工品(めんつゆなど)の売れ行きは伸びているようです。醤油の基本を知った上で、スーパーなどで並んでいる加工品に目を向けてみてはいかがでしょうか。
 次回は、調味料4種目、お酢のお話です。

 ちなみに我が家では、和洋とわず様々な料理の隠し味に醤油が使われています。カレーを始め、ラタトウユやタルタルソースなど、イタリアンやフレンチにも最後にちょっと入れると、まろやかで安心した味付けになるようです。これは日本人の醤油信仰からきているのかと思っていましたが、最近フランスでもソースに醤油が使われるようになったそうで、ちょっとまんざらではない気分...。ふふふ...。