『食の豆々知識』 Vol.15 続酢

  やっと、少し涼しい風が感じるようになってきましたが、皆様、夏バテされていませんか?夏の1番暑いときよりも、少し涼しさが感じられながらもまだ暑いこの今が、夏バテしやすい季節といわれています。また、食中毒も気を抜いた今がまた、出やすくなる時期です。安全で栄養のあるものを食べて、元気に食欲の秋を迎えましょう。ということで、食欲増進、疲労回復、更には殺菌力のある「酢」のお話、続編の働きについてです。

① あく抜きと漂白作用
ごぼうや、山芋、れんこんなどの白くてあくの強いものを切ったあと、酢水にさらしたり、酢を加えて下茹ですると白く仕上がり、あくも抜けます。ただし、酢が強すぎて、あくは抜けても酸味が残ってしまっては意味がありません。くれぐれも、酢の分量には気をつけて。酢の濃度は2~3%。また、さらしたり、酢水でゆでたりした素材は、水で洗ったり、茹でこぼすという作業も怠らないように。

② 発色作用
お寿司屋さんで出てくる甘酢生姜「ガリ」、もちろん着色されているものも多くありますが、もともとは自然に変色したものです。これを行っているのがこの作用。生姜やみょうが、ずいきなどを酢に漬けると、きれいなピンクに変色します。焼物に添えてあるはじかみ生姜の赤色も、もちろんこの作用。

③ たんぱく質凝固作用
サバや鯵などを酢で締めると、表面から白く変色し、身が締まり固くなってきます。これは、酢が魚のたんぱく質を固め、旨味を閉じ込める作用があるため。また、卵を茹でるときに湯に酢を加えておくと、殻が割れてしまったときに卵白の流失を防ぐことができます。ただし、これもまた、酢で締めすぎて、表面だけではなく中まで白くなってしまうと、つやもなくなり、ぼそぼそとした食感になりますし、ポーチドエッグをつくる時に酢を多量に入れるとすっぱいポーチドエッグができてしまいますので、ご注意を。

④ 殺菌作用
塩などと同様、殺菌作用がありますので、酢に漬けておくと保存がききます。先ほどもでました、甘酢生姜などは、煮沸消毒した瓶などに入れ、冷蔵庫などできちんと保存すれば、1年は持ちます。ので、多くの寿司店や日本料理店は、新生姜が出回った時期に1年分作って保存していることが多いようです。当然これは、発色させたいために酢漬けにしたというよりは、保存するために酢漬けにしたら、ついでにきれいに発色したということでしょうね...。

⑤ 素材を軟らかくする作用
昆布煮や小魚の甘露煮、蛸の柔らか煮などを作るときに酢を加えて煮ると、早くより軟らかくなる作用を持っています。これは火を加えることで、細胞膜を壊す働きがあるためで、あたりまえのことですが、火を加えない酢だこはやわらかくなりません(笑)。

⑥ 食欲増進、疲労回復、また生臭さ、油っこさ、しつこさを抑える作用
酢の酸味が食欲を増進させたり、疲労感を取り除く働きがあるのは有名ですが、味に支障がない程度の少量でも、サバやイワシなどのくさみのある魚の煮物や、油っこい豚肉の煮物などに、最後に酢を加えると、さっぱりと仕上がります。ぜひ、1度、サバの味噌煮や煮豚などにお試しを。くるみや黒糖などを使った強いデザートなどにもおすすめ。

 以上が基本的な酢の働きですが、これらの目的のために使うには、くせのない穀物酢がおすすめです。前回もお話致しましたが、合成酢ではこれらの働きの力が弱いため、おすすめはできません。
次回は、調味料の「さしすせそ」の最後、「味噌」についてお話いたします。

 ところで、今まで調味料の種類と働きのお話をしてきましたが、重なっているような働きが多いことにお気づきになっていますか?先日、料理教室で生徒に茄子のあく抜きを塩水、または真水で行うようにいったところ、「あれ?あく抜きって酢水でするんじゃなかったでしたっけ?」という質問が返ってきました。素材によってあく抜きの調味料が違うということを教えるのは難しいなと感じた一瞬でした。また、酢飯のように、砂糖と酢が共にご飯を軟らかく保つ働きをする場合もありますし。皆様、どうぞお間違えのないように。
 さて、今日のうちの夕飯は、ビタミンたっぷり、食欲増進、疲労回復の酢豚に致しましょうか。