『食の豆々知識』 Vol.19 酒

寒くなりましたね~。こんな日はやはり、熱燗でおでんでもつまみたいところ…。と、そうではなくて、今回は、飲むための酒ではなく、調味料としての“酒”のお話。

料理に用いられる酒は、日本では、圧倒的に清酒(日本酒)、それに次いでワインということらしいです。まぁ、わかりきったことのようでもありますが。
ワインが、一部の西洋料理の下味として使われることに対し、清酒の用途は想像以上に幅広く、日本料理のほとんど全てに使われるばかりではなく、酢豚やかに玉などの中華料理にも清酒が使われています。

調理効果としては、
○ 風味をつける
天然のアミノ酸などの香味成分により、料理に複雑な旨味、香りを与える。
○ 生臭さを消す
清酒の持つアルコール分は、臭み成分を蒸発させ、好ましくない臭いを独特な香りで覆い隠す。
○ たんぱく質の凝固を促進させる
白身魚の蒸し物などの初期段階では、材料の表面が蒸気でぬれて味が逃げたり、表面の舌触りが悪くなったりするが、清酒のアルコール分はたんぱく質の凝固を早め、表面を引き締めることができる。
などがあげられます。
みりんと同様な性質を持っていますが、大きな違いは、清酒には強い呈味成分がないため、多量の塩分や甘味(みりんを含む)を使えない料理があっても、清酒を使えない料理はほとんどない、ということでしょうか。
ですから、清酒は、“風味料”“旨味料”として、肉や魚の下味から、淡白な素材の料理や吸い物、炊き込み御飯の仕上げの香り付けまで、様々な料理の、様々な工程で使用されているのです。

ちなみに、清酒は、原料や製法により、本醸造酒、純米酒、吟醸酒などの特定名称酒とその他の普通酒に分かれますが、吟醸酒などは高価であり、また精米歩合が高く、アミノ酸や有機酸などのもとになるたんぱく質がほとんど除去されているので、基本的には用いません。好みや料理にもよりますが、辛口の普通酒が一般的です。
みりんの時にも触れましたが、同じような理由で、清酒にも、アルコールを含まなかったり、飲めないくらいに塩が入っている“料理酒”というものがあります。これらはもちろん、上記の調理効果はのぞめません。また、醸造されずに人工的に作られた合成清酒もあまりおすすめはできません。

さて、長々と続いた調味料の豆々知識のシリーズも今回で、今度こそ本当に終了です。さて、次回からは、何の豆々知識をお話していきましょうか…。

ところで、日本酒だけで豚肉のしゃぶしゃぶをしたことがありますか?
一度あるお店で食べた時に感動し、もったいなくも、たまたまうちに眠っていた高価な純米酒を使って再現してみました。酒の効果で、豚肉の臭みがまったくなく、風味や甘味も増し、アルコールも飛び煮詰まった最後のスープまで大変おいしく頂きました。
これに味を占め、ただ、さすがにちょくちょくと高価な純米酒が眠っているわけもないので、2Lパック入りの辛口の普通酒で、またまたやることにしました。これが、こんなに違うものかというほど違うんです。豚肉は臭みはなくなりましたが、代わりに強すぎる日本酒の風味がつき、また、最後のスープもくどい甘さがかなり残り…。
それ以来、豚肉のしゃぶしゃぶは、日本酒のみではなく、昆布だしで2倍にのばすようにしています。もちろん、高価な純米酒は、そのまま飲みながら…。やはりもったいないですから…(笑)。