『食の豆々知識』 Vol.21 旬

さて今回から、旬や話題の食材をテーマに、その特徴や調理法の知識を豆々シリーズとしてお話していこうと思っています。

まずは、“旬”について。
養殖技術や、品種改良・栽培方法の進歩により、“旬”がなくなりつつあるといわれている現在、食品売り場やレストランでは、“旬”という言葉が新鮮な素材の形容詞かのように使われています。ところで“旬”とは何なのか、本当の意味をご存知ですか?
辞典を見てみると、“魚貝類、野菜類、果物類等の最も美味な時期をさしていう言葉(調理用語辞典より)”とありました。そしてまた、俗にその素材の旬とは長くても2週間ほどしかないものだといわれてきました。
しかし、この定義は今の時代にあったものなのでしょうか。
ある魚を焼物にするとします。その場合は、産卵前の脂ののった時期がもっとも味の良い時期ということになり、旬は、確かに長くても2週間ほどしかありません。しかし、その魚を刺身で食べるとしたら、もしかしたら脂ののる前の方がさっぱりとしていて、味が良いといえるかもしれません。また、干物にする場合、やはり脂がのりすぎていると干物にはむかない場合もあります。つまり、調理法によって同じ素材でも旬が異なるという場合もあるわけです。
ある野菜が、北海道と沖縄で栽培されているとします。南北に長い日本列島、気温や気象の違いで、収穫に差が出ます。つまり、地域によっても旬は異なるわけです。

今は流通、保存(保冷)事情が急速に発達し、日本全国どころか世界各地でとれたものが鮮度を保ちながら手に入るようになりました。
また、調理法も幅が広がり、日々新しい食べ方が提案されています。
さっぱりとした初鰹が好きな人もいれば、脂ののった戻り鰹が好きな人もいる。出回りの初期(はしり、初物)が好きな人もいれば、最後(なごり)が好きな人もいる。もちろん、最盛期の安いときが好きな人もいる(私のこと??)。人によって“旬”のとらえ方は様々になってきているのかもしれません。

スーパーに行っても“旬”を感じづらくなっていることをちょっと寂しく感じる一面、過去の状況に基づいた意味合いである“旬”の時期が、現在では長くなったり、時期がずれてくることがあっても、時代の流れなのかもしれないなあと思い、寒い時期には温かいものが食べたくなるように、食べたいと思った時期が旬なのかなあと、気楽に考える今日この頃です。

今回から、旬の素材を1例あげて、その調理法などをお話しようと思っていたのですが、その“旬”の話だけで長くなってしまいましたので、素材の例をあげるのは次回からにすることに致します。“旬”の定義が難しいといったわりには、次回は、昔から3~4月が“旬”であるといわれている “あさり”についてお話するつもりです(笑)。

ところで、一般的に、産卵時期をすぎた魚はやせほそり、おいしくないとされています。産卵を終えても、やせない、もとにもどらない、とさわいでいるのは、人間だけなのでしょうか...。私のことじゃないですけどね...。