『食の豆々知識』 Vol.23 寒天

さて、今回は、“噂のデトックス”にもかかせない、“寒天”について、お話しましょう。
ちなみに、老廃物や有害物質などの毒素を体外に出すことで健康になるという考え方を“デトックス”(解毒あるいは体内浄化)と呼びます。このデトックスという新しい発想が、リセットダイエットとしてここ近年、ちまたでは大ブレイクしていることをご存知でしたか?

<原料と形状>
天草(てんぐさ)を主原料にその他の海藻類とともに煮溶かしてから漉し、凍結させ、さらに充分に乾燥させたもの。形状として、従来からある海綿状の天然寒天(棒寒天、糸寒天)と、機械で製造した工場寒天(粉末寒天、固形寒天、フレーク寒天)があります。
糸寒天は、棒寒天に比べ、コシが強く上質であり、高級和菓子などに使用されています。棒寒天は、どちらかといえば、家庭向き。粉末寒天は、品質が均一で、計量も簡単、水で戻すことも、裏ごしをすることもなく使用できるので、一番手軽です。固形寒天は粉末寒天を固めたものなので、計量が不要であり、また、フレーク寒天は、保水性が高く、不完全な撹拌でも沈殿しないため、高級和菓子などに使用されていますが、ともに一般では手に入りづらいようです。
天然寒天は、自然の気候を利用しているため、製品の品質が不安定であること、また、水戻しや、裏ごしが必要なため、年々消費が減り、工場寒天が主流となってきましたが、天然寒天の方が透明感があるため、未だ天然寒天にこだわる、和菓子屋や日本料理屋も少なくはありません。ただ、成分的にはほとんど変わりないようです。

<調理のポイント>
棒・糸寒天は使用する3~4時間前に、たっぷりの水につけて水分を充分に含ませること(20倍以上の水を含みます)。乳白色になるまで戻ったら水気を絞り、液と寒天を鍋に入れて火にかけ、弱火で煮溶かしながら、1割程度、煮詰めます。完全に溶解するには、沸騰後5分以上煮沸する必要があり、これを怠ると凝固力が弱まります。必ず、裏ごしし、型に入れて固めます。
粉寒天は、水戻しも裏ごしも不要(短時間の水付けが必要な場合もあり)です。
固めずに食することも可能で、糸寒天は、水で戻した後、サラダや和え物などに使用します。また、粉寒天は、溶けやすいため、90度以上のお茶などに溶かしただけで飲むこともできます。煮沸することで、とろみをつけることもできます。
酸と一緒に加熱すると劣化するため、固まりづらくなるので、併用する場合は工夫が必要です。

<特徴・他の凝固剤との違い>
寒天の凝固点は33℃~45℃、融点は85℃~93℃が一般的です。このように凝固温度と融解温度が異なることをヒステレシス(Hysteresis)と呼び寒天の大きな特徴となっています。これにより、単に固めて食べるだけでなく、とろみを活かした食べ方も可能なわけです。
ちなみに、凝固剤としては、他にゼラチンが一般的でありますが、寒天との違いは、ゼラチンは牛や豚のコラーゲンを原料とした動物性であるというこうこと。また、沸騰させると、凝固力が弱まり、凝固点も20℃と低い。つまり、常温で固まる寒天とは違い、冷蔵庫に入れないと固まりません。透明感があり、独特の弾力、柔らかく口解けのよさなど食感にもかなりの違いがあります。
また、アガーと呼ばれる凝固剤は、カラギナンと呼ばれる海藻から作られ、寒天に似た性質を持ちながら、食感はゼラチンに近く、3つの中で、最も透明感を持っています。無味無臭であること、また、寒天よりも高い温度で固まるため扱いやすいことなどから、市販の食品の凝固剤には、ほとんどアガーが使用されているようです。

さて、なぜこの寒天が、話題となっているかといえば、寒天はローカロリーであるばかりか、食物繊維の含有量がすべての食品の中でもっとも多いのです。また、ゲル化する性質が、ファイバーデトックスの効果をあげるだけでなく、糖やコレステロールの吸収が阻害され、血糖値の上昇が緩やかになり、余分なコレステロールを体外に排出してくれ、更には癌の発生をも抑制する働きをもつという、優良な食品なのです。
このことが発表され、話題になってから、スーパーの店頭から寒天が姿を消すという現象までおこりました。しかし、これは、日々の食卓に取り入れなくては効果が出ないものです。そこで、ぜひ、飲食店のメニューにも、寒天を加えてみてはいかがでしょうか。朝のドリンクをここで飲むと、ランチをこの店で食べると、一杯飲んでから帰ると、体の調子がよくなる、なんてことになったら、いいですね。ちなみに、沸騰させて煮溶かした液体状のもの(つまりは、体内で固まらせるということ)を食事の前にとることが、ダイエットには一番効果的だそうです。ま、ここまで徹底しなくてもいいとは思いますが…。
ところで、ゼラチンは、0~70℃の間であれば、固めたり、溶かしたりを繰り返しても、ほとんど凝固力はかわりませんが、寒天の場合、一度固まり始めたものを、溶かすと、固まる力が弱くなります。
昔、水羊羹を作るときに、とろみがつきすぎて型に流しづらくなったので、もう一度流し込めるくらいに溶かしたら、もう全く固まらない…、という悲しい思い出がありました。皆様はどうぞ、お気をつけください。