『食の豆々知識』 Vol.24 お弁当

桜が散り始めてもなかなか暖かくならなかった今春ですが、5月に入り、やっと気持ちのよい日差しが続くようになってきました。
毎年この季節になると、お花見を始め、行楽日和、また幼稚園などが始まったお母さんのために、TVや雑誌でお弁当特集が組まれます。更には、ここ近年新しい分野ともいえるお弁当が登場し、話題を集めています。今回は、食べ物の知識ではありませんが、旬なものとしてお弁当のお話。

まずは、お弁当の知識から。
<定義と由来>
外出先で食事をするために器に入れて携帯する食品や、その器をさして“弁当”といいます。蓋付きの飯器“面桶(めんつう)”が変化したもの、あるいは中国の俗語で便利なものという意味の“便当(べんとう)”が変化したもの、などの説があるようです。

<原形と歴史>
お弁当の起源は、平安時代、“頓食(とんじき)”とよばれたおにぎりや、ご飯を乾燥させた“干し飯(ほしいい)”を携帯食として利用したことに始まります。
安土桃山時代には、現代でも見られるような漆器のお弁当箱が作られるようになり、当時からお花見などで食べられるようになりました。平安時代には、趣向をこらしたものが現れ、歌舞伎や能の幕間に特製のお弁当を食べるようになりました。これが、幕の内弁当の始まりです。更にこの時代には、すでに、弁当のハウツー本が出版されるようになります。
駅弁が発売されたのは、明治時代。1885年7月16日に宇都宮駅で始めて売られるようになったといわれています。
昭和時代になると、アルマイト加工されたものをはじめ、さまざまお弁当箱が開発され、1970年代にはジャー式の保温弁当容器も開発されます。更には、コンビニエンスストアや持ち帰り弁当専門店も急激に普及し、新たな市場が広がります。電子レンジで温めるということから、金属製の弁当箱からプラスティック製の弁当箱に変化していきます。
2003年ごろから空港で販売された“空弁”がブームになったり、デパ地下などで行われる弁当フェアは、大盛況であったりと、もはや、携帯食の枠を超え、お弁当はさまざまなバリエーションで楽しまれるようになりました。

<日本の弁当>
食事を携帯するという習慣は世界中で見られます。例えば、アメリカではランチボックスと呼ばれる弁当箱(最近日本ではこの容器に丼ものを詰めて売っていたりしますが)にピーナッツバターとジャムなどの簡単なサンドウィッチとフルーツを入れて学校に持参する。また、インドではチャパティとカレーを積み重ね容器(一時日本でも流行りましたね)
に入れて携帯するなど。しかし、日本で食べるジャポニカ米はインディカ米などと比べ、冷めてもおいしいという特徴があるためか、他国に比べお弁当の歴史は古く、また種類も比較にならないほど多いのです。
この習慣は、独特の日本文化でもあり、近年アメリカなどでは、“bento”と呼ばれる、日本のお弁当がブームになっているようです。

<弁当の作り方>
お弁当の分量は、ものによってさまざまですが、基本的には、450~500gくらいのものが一番主流のようです。これは、日本人の平均的な食事の量が600gであるということからも納得できます。お弁当に汁物、または飲み物をつけるとちょうどおなかが満たすという訳です。ご飯の量は、180~250gといったところでしょうか。もちろん女性向けのお弁当は、小さめの350~400gくらいが主流です。
決まった様式があるわけではありませんが、幕の内弁当のような現在主流のお弁当は、ご飯、肉魚の主菜、野菜を中心とした副菜、漬物またはデザートの比率が、4:3:2:1ということがあるひとつの目安になっています。しかし、最近話題のマクロビオティックなどで推進されている一例として、穀物、野菜、肉・魚の比率が5:2:1であることなどにより、野菜が多いお弁当の人気がでてきているようです。
ご存知のように、食中毒をなくすために、食材をよく加熱することや、水蒸気で水分がでないように、完全に冷めてから詰めるなどの注意が必要のほか、汁気の多いものは避けるようにします。また、汁気のものをあんがけにするときは、片栗粉でとろみをつけると冷めたときにだれてしまうので、くず粉を使用したり、みずあめを使用したりと工夫も必要です。

さて、お弁当の基礎知識はここまでにしておいて、ここ近年で急激に注目されている“キャラ弁”という、新しい分野ともいえるお弁当があるのをご存知ですか?
もともと、園児のお弁当に、タコさんウインナーなどの飾り切りや、のりやケチャップで顔をかいたりしていたものが、更に手が加えられ、アンパンマンやピカチュウなどの子供の人気のキャラクターの形をもりこんだお弁当が作られるようになりました。キャラクターの形をしていることで、小食な子供が残さずお弁当を食べるようになったなどの理由もあるようです。
そして、それらは更にエスカレートし、虐待弁当と称する、さまざまな似顔絵などのお弁当や、パソコンなどの商品の形をしているお弁当までが登場しているのです。これは、近年、ブログなどインターネットの普及にともない、自分で作った力作のお弁当を発表できる場が、簡単に得られるようになったことが、背景にあり、今や、キャラ弁のブログは大人気で、TVで紹介されたり、本まで出版されたりしています。
キャラ弁がコンビニで、売られるようになるのも、時間の問題かもしれません。どうも、私にはおいしいそうには、見えませんが...(笑)。


ちなみに、私事ですが、うちの小猿(2歳男)は、食物アレルギーがあるため、お弁当とおやつを毎日持って保育園に行っています。この間、初めてじっくり、園児のお弁当という本をみたら、園児のお弁当のご飯の量は100gでした。小猿は、2歳児なのに、150gのご飯をぺろりと食べてきます。更におやつも、しっかりと腹にたまるようなものを入れてます。...やはり、重い重いとは思っていましたが、食べ過ぎのようです…。