『食の豆々知識』 Vol.27 輸入牛と国産牛①

農水省は6月27日、脊柱(せきちゅう)の混入で今年1月に止まった米国産牛肉の輸入を、約半年ぶりに再開することを正式決定しました。8月初めにも、実際の輸入が始まるようです。冒頭、宮腰副大臣は「輸入手続き再開にあたり、消費者の理解と信頼を得るよう対処することが大変重要」と指摘しました(Yahoo!ニュース 共同通信)。
先日その第一弾の輸入牛が到着したようですが、前回どんな検察検査をやったのかを公表しない日本政府が、どう納得いく対処をするの?という疑問符が飛ぶ今日この頃です。そんな訳で今回は、牛肉の話。


● 外国生まれ、外国育ちの国産牛?
競馬馬の場合、子供のときに輸入して日本の牧場で育てた馬(外国産)と母馬のおなかにいるときに輸入して、日本で生まれた馬(国産)とでは、ダービーに出られないなど、扱いが違うみたいですね。あんまりくわしくはないですが。つまり、競馬馬の場合、出生地が問題なのですが、牛は違うんです。
国産牛の定義は、「国内における飼養期間が外国における飼養期間より長い家畜を国内で屠殺したものが国産品」とする、ということになってます(昨年3月より)。ということは、外国で生まれて、外国で育っていても、輸入して、日本で育てた期間が1日でも長ければ国産になってしまうんですね。実際問題、生きた牛を輸入して屠殺し、解体するのは大変コストがかかりますから、そんなことはないようですが。でも、法律違反じゃないんです。
なんか国語的に間違ってますよね(私の文章もあまり正しい国語ではありませんが...)。


● 吉野家が頑固にオーストラリア産の牛丼を作らない訳。
松屋、すき家をはじめ、次々とオーストラリア産や中国産の牛を使用した牛丼を提供しているなか、未だ、吉野家は、頑固として豚丼のみでがんばっています(他のメニューでは、オーストラリア産牛を使用)。アメリカ産とオーストラリア産で、そんなに味の違いがでるのでしょうか。
 輸入牛は、その牛が仕上げの段階で穀物を与えられたか、牧草のみで肥育されたのかによって、穀物肥牛肉(グレインフェッドビーフ)と草肥育牛肉(グラスフェッドビーフ)に分類されます。アメリカ産は、穀物肥育なのに対し、オーストラリア産は、最近でこそ様々な品種を肥育していますが、それでも70%は草肥育。私の感覚で言えば、穀物を食べていた牛と、牧草を食べていた牛とでは、味というより、匂いに差があるようです。よく、“オーストラリア牛の独特の臭いを取る方法は?”などの質問もあるのは、日本人が、穀物肥育の匂いに慣れているからかもしれません。
 話はもどりまして、吉野家が使用していた牛肉は、穀物肥育で、1頭につき約10kgしか生産できない特別な部位だったそうで、穀物肥育の牛が全体の30%しかないオーストラリア産では、必要な供給量が確保できないため、他社のようにオーストラリア産に切り替え!とはいかない、それだけこだわりがあるということですね。


「飲食店で米国産牛肉を食べる」と4人中3人が回答し、輸入再開を冷静に受け止めていた前回(2005.12)とは異なり、今回の米国産牛肉輸入問題におけるインターネット調査では、「あぶない」から「食べたくない」と答えた人が6割、また、外食産業や加工品も、原産地表示の義務付けすべきとする回答は、9割にも達しました。
日本政府が失った信用は、そのまま食品メーカーや飲食店の信用喪失に結びつきます。どんどんきびしくなっていく消費者の目とともに、外食産業も苦しみながらもそれに答えていく努力をしていかなくてはいけないようです。
次回は、今回に続き、和牛と国産の違い、トレーサビリティ制度について、お話していきます。


参考:http://www.maff.go.jp/
http://nr.nikkeibp.co.jp/
http://www.yomiuri.co.jp/

● 和牛と国産牛、2割の人は同じものだと思ってる。

● ブランド牛は本当にうまいのか?

● 最近話題(?)のトレジャーサービスとは?