『食の豆々知識』 Vol.30 柿

先日、友達の家の庭になったという柿をたくさん頂きました。
甘柿は、甘柿の種を蒔いて木になったものからとれるもの、と簡単に思っていたのですが、違うんですね。甘柿の種を蒔いても、それだけでは渋柿になるんだそうです。甘柿にするには、甘柿の枝を接木しなくてはいけない。なかなか、大変なことらしいです。
そういえば、サザエさんに出てくる、近所の庭の柿の木はいつも渋柿だったような…。普通の家では、接木なんてしませんものね。
と、いうことで、今回は柿の話。

● 学名でもKaki
会の学名は、「ディオスピーロス・カキ」。なんだか、かっこいいですね。ディオスピーロスとは、「神から与えられた食べ物」という意味だそうです。意味までかっこいい名前でした。と、いうことで、柿は、海外でも「カキ」で通じます。ちなみに、日本以外では、東アジア各地、アメリカ、ブラジル、イタリア、ニュージーランドなどでも栽培されています。

● 柿は、お菓子の原点
柿は、奈良時代に中国から渡来し、根付いたとされています。砂糖が高価なものだった時代には、柿は、貴重な甘みとして珍重されていました。
特に保存性が高い干し柿は、果物としてではなく、お菓子としての原点であったのではないかといわれています。ある老舗の駄菓子屋のご主人は、「駄菓子の甘さの基本は干し柿である。干し柿の甘さを超えてはいけないのだ。」と語っています。と後半部分は、「美味しんぼ」にのっていたような…(笑)。

● 渋柿は、アルコールで甘くなる
品種は世界で1000種類以上あり、果実の形状も大きさも変化に富んでいますが、主に、甘柿と渋柿に大別されます。
渋味はタンニン物質であるシブオール。甘柿にもタンニンは含まれています。渋いかどうかは、タンニン物質が水溶性か、不溶性に変わっているかで決まります。甘柿の場合、熟してくるとタンニンが不溶性に変わり唾液に溶けないため、渋さを感じません。
渋柿は、熟柿、干し柿、または渋抜きしたものが出回ります。
渋味をとるにはアルコールが効果的です。柿のヘタの部分に焼酎をつけ、新聞紙の上にヘタを下にして並べます。ビニール袋で密封し、日の当たるところで3~5日置いておきます。これ以外でも、りんごを一緒に入れたりと、いろいろ方法はあるようです。
甘柿で有名なのは、富有柿、次郎柿。渋柿では平核無(ひらたねなし)柿など。ちなみに、次郎柿は次郎さんが作ったからだとか。

● 柿が赤くなれば、医者が青くなる
なんだか、このことわざは、りんごでもあるような気がしますが、柿もそういわれるくらい、栄養価の高い果物です
大きめの柿を1つ食べれば、1日のビタミンCの必要量が摂取することができ、風邪の予防や美肌効果があるばかりではなく、老化の進行や免疫力の低下を防いでくれます。
また、免疫機能を高め病気の予防ができるカロチン、発ガン物質やコレステロールの排泄を促す食物繊維、ビタミンAが多く含まれています。
柿が、二日酔いに効果があるのは、よく知られていますが、それは、利尿作用のあるカリウムを含み、糖分がアルコールによって低下した血糖値を回復させ、渋味の原因であるタンニンがアルコールの吸収を防ぐためであり、また、これは、悪酔いを防ぐと、飲む前に飲むのも効果があるのです。
更に、このタンニンは血圧を下げる働きがあり、高血圧や動脈硬化も予防します。

● 柿のなますは理にかなっている?
柿は、変色しやすいので、切ったらすぐにレモン汁か酢をかけて色止めします。また、大根と調理すると消化力が高まり、ビタミンCの摂取量も高まります。ですから、昔から、柿は、なますやおろし和えなどの料理にもよく使用されていたんですね。
葉にも、レモン20倍のビタミンCが含まれ、柿の葉茶や柿の葉酒として、飲用されています。柿の葉寿司などは、柿の葉の抗菌作用を利用したものです。

 日本料理だけでなく、最近では、フレンチやイタリアンでも、柿は、料理にもよく使用されます。どうも、私は、なますや、おろし和え、ごま和えなどに柿が入っているのは苦手なのですが、最近、柿の天ぷらを食べました。トマトの天ぷらが好きな私としては、この、塩をかけて、つまみにも、砂糖をちょっとふっておやつにもなる柿の天ぷらも、かなり気に入り、この秋は、夏のトマトに続き、柿の天ぷらがくせになりそう…。