『食の豆々知識』 Vol.31 クリスマス

師走です。
クリスマスのイルミネーションがチカチカと輝き、クリスマスチキンやクリスマスケーキの「ご予約承ります」という文字がよく目立つようになってきました。
ところで、なぜ、クリスマスには、チキンを食べるようになったのか、ご存知ですか?
そんな訳で、今回はクリスマスの食べ物の話。

● もともとは、七面鳥を食べるもの?
その昔、アメリカに移り住んだピューリタン(清教徒)が、秋の収穫祭(感謝祭)のお祝いに、野生の七面鳥を捕らえて食べたことが始まり。それがやがて、欧州へ逆輸入、クリスマスに食べる習慣になったようです。
彼らにとって、たまたま七面鳥が、一番身近にいた贅沢ということだったのでしょう。

● ローストターキーは甘い?
七面鳥は、一般的に、中にお米や栗などの「スタッフィング」といわれる詰め物をし、オーブンで焼き上げます。
焼いたときにでる肉汁から作る「グレービーソース」も、もちろん美味しいのですが、アメリカではそれ以上に、甘酸っぱい「クランベリーソース」がよく使われます。肉を甘くして食べるということにあまり慣れていない日本人は、甘酸っぱいターキーやチキンにびっくりすることが多いようです。
ところで、実はアメリカでは、ターキーは感謝祭(11月最後の木曜)に食べ、クリスマスにはターキーよりもローストチキンやローストビーフをよく食べます。七面鳥は大きいもので10kgを超え、チキンの4~5倍にもなります。小型のものも出回るようになりましたが、それでも料理をするととても一度では食べきれず、4~5日は残り物を食べなくてはならなくなるため、1ヶ月後のクリスマスの時期には、まだ食べたくないという気分なのかもしれません。
ちなみに、イギリスでは、逆に、一年中七面鳥は手に入りますが、クリスマスの時期にしか食べないという人も多いようで、クリスマスにはローストターキーははずせないようです。もとは同じなのに、面白いですね。

● ケンタッキーをクリスマスに食べるのは、日本人だけ?
以前、アメリカ人の友達に、“カーネルサンダースとサンタクロースが似ているから、日本人はクリスマスにフライドチキンを食べるの?サンタがフライドチキンを担いで煙突から降りてくると思っているの?”とまじめに聞かれたことがあります。
“日本人はクリスマスにケンタッキーを食べる”ということは、どうも海外でうけているらしい…??
ケンタッキーが日本に上陸したのは、1970年。その次の年に青山に出店しました。その青山店にて、日本に住む外国人の“日本ではターキーが入らないので、クリスマスにフライドチキンをデリバリーしてくれ”というオーダーが発端で、1974年初めてクリスマスのキャンペーンを実施したそうです。つまりは、“アメリカ人はみんなクリスマスにケンタッキーのフライドチキンを食べている(これは着色)”。これが、定着したのですから、日本人にとっては、日本人だけが、クリスマスにフライドチキンを食べるということは、心外ですよね。
クリスマスにはチキンという風習が根付き、ファーストフード店を初め、スーパーやデパートのデリ惣菜店で、こぞってフライドチキンを売るようになったのはこういう訳なのです。

● クリスマスにはなぜケーキを食べる?
それは、イエスキリストの誕生を祝うバースデーケーキだから。最近では、クリスマスはサンタさんがプレゼントをくれるもの、ということだけが走ってしまい、その日が、イエスキリストの誕生日を祝う日だということを忘れられている気もしますが…
話はもどって、だから、日本のクリスマスケーキのイメージは、デコレーションをしたものなのでしょうね。今年も、有名ケーキ店の一番人気は、やはり、生クリームといちごのデコレーションケーキだそうです。
ちなみにクリスマスケーキの歴史は、なんと明治43年(1910年)までさかのぼり、不二家の創業時に発売したのが始まりだそうです。戦後、砂糖や小麦粉の制限がなくなり、また、冷蔵庫の普及に伴い、スポンジに生クリームやいちごがデコレーションされた生ケーキが急速に普及していったようです。

● 1年熟成させたクリスマスケーキがある?
日本では、生ケーキが主流ですが、世界では様々なクリスマスケーキが楽しまれています。
最近日本でも人気がでてきたのは、フランスの、「ブッシュ・ド・ノエル」。フランス語で“クリスマスの薪”の意。キリストの誕生を祝い、暖炉で夜通し薪を燃やしたことに由来するといわれ、その名のとおり、ロールケーキをココアクリームで覆い、筋をつけて樹皮をまねた、薪の形をしているケーキです。
イギリスのクリスマスケーキといえば、濃厚なフルーツケーキのことで、“クリスマスプディング”と呼ばれます。8時間近くも蒸し、それを何ヶ月もかけて熟成させた伝統的なケーキで、イブの夜にブランデーをかけ、フランベして食べます。「クリスマスプディングを食べ終わったらすぐに、来年のクリスマスプディングを作り始める」といわれるほど、熟成時間がおいしさのもとだそうです。
他にも、ドライフルーツがたっぷり入った細長いパン、ドイツの「シュトレイン」や、これもまたドライフルーツが入ったドーム型の菓子パン、イタリアの「パネットーネ」など、クリスマスケーキには賞味期限が長いものが多くあります。
そんなこともあり、生ケーキが主流の日本では、26歳(26日)は売れ残り、29歳(29日)は賞味期限切れなど、大変失礼にも、女性がクリスマスケーキに例えられることは、フライドチキン同様、海外では有名なうけ話のようです。

 さて、今年は、どんな食事でクリスマスを迎えるか、決まりましたか?
  ちなみにうちの24日は、有馬のお馬さん次第で、ステーキになるのか、鳥のから揚げになるのか…(笑)。