『食の豆々知識』 Vol.32 猪

明けましておめでとうございます。
ジンギスカンの大ヒットで人気になった羊肉に続き、馬肉の人気も急上昇で、今や、牛、豚、鶏以外の野生や獣肉に注目が集まっています。
と、いうことで、せっかく亥年な今年ですから、年明けコラムは、猪肉のお話から。

● 勇気を与えてくれる肉、猪。
猪は、精が強いためか、食するほどに身体がほてってぽかぽかしてきます。日本では、江戸時代、獣肉の食用をさけていた時代でも、猪は「山鯨(ヤマクジラ)」と呼ばれ、寒さ厳しい冬の季節の栄養補給食として大切なものであったそうです。
また、栄養面から見ても、ビタミンB1が多く、カルシウムは牛肉の2倍以上と満点で、薬食ともされていました。
ヨーロッパでは、現在でも、人間に勇気を与える肉をして、猪肉がよく食されています。
猪突猛進といわれるパワーは、食べてからも得られそうです(笑)。

● ドングリを食べた猪が旨い?
猪の狩猟解禁の時期は、11月中旬から2月の中旬までですので、旬はこの間ということになりますが、なかでも12月までが脂ののりがよく、更には雪が降ってからのものが美味しいといわれています。
猪は雑食性で、きのこをはじめ、木の実、昆虫、カエルや蛇まで食べるため、肉には臭みやくせがあります。そこで、木の実やドングリなどを食べた、香りがよく脂がのっている時期のものが好まれるのかもしれません。
もちろん、年をとったものは、肉も堅く臭みも増しますので、生後1年くらいのものがおすすめです。

● ぼたん肉は、猪の鼻からついたの?
猪の肉のことを「ぼたん肉」、猪鍋のことを「ぼたん鍋」 と呼びますが、これはもちろん、猪の鼻が、洋服のボタンみたいだからではありません(笑)。ぼたんは、「牡丹」からきたもので、「牡丹に唐獅子」などいろいろな説があるようですが、一般的には、大皿に猪の肉を広げて盛り付けると牡丹の花のようだから、といわれています。
ちなみに、「さくら肉」と呼ばれる馬肉に対抗して、という説もあり。

● 猪、猪豚(イノブタ)、豚肉、さて、どれが1番旨いか?
猪を家畜化したものが豚。両者を交配させたものが猪豚です。
肉の味は似ていますが、猪の肉は、他に比べやや堅く、煮れば煮るほど風味が増し、ほぐれるようにやわらかくなるのが特徴。更に、脂身は、豚肉よりもあっさりとしていて淡白で、食べてももたれません。
上記でも記したように、猪肉には、独特の臭みやくせがありますが、これがまた、「ぼたん鍋は、やはり野生に限る」というやみつきになってしまうファンも多く、私のコラムにはありがちな、最後はやはり、好みです(笑)。

● 1番人気はどの部位か?
猪は、肉よりも脂が美味しいとされ、豚肉では安い方になっている三枚肉が、実は猪では1番人気で、値段も高い部位なのです。
食べ方としては、焼肉などもありますが、やはりぼたん鍋が人気。ごぼうやせりなどあくの強い野菜の方があうようです。臭みを消すために味噌仕立てにし、粉山椒を加えて煮込みます。
また、酒で1時間以上煮込み旨みを引き出し、すき焼き風に煮込む「猪鍋(シシナベ)」も"通"には答えられない味覚だそうです。実は、猪鍋は私は食べたことがないのですが...。
ヨーロッパでは、ほとんど豚肉同様に調理しますが、臭みを消すためにマリネをしてから用いたり、オレガノなどの香辛料を使ったりすることが多いようです。
ちなみに、一応、豚肉と違ってレア(生焼け)でも食べられます。かなり野生特有のにおいがしますので、あまりおすすめしませんが。

猪に限らず、最近では被害が及ぶのを防ぐため捕獲したエゾ鹿や熊を利用した地元料理が話題となったりしています。
せっかく今年の干支なのですから、たんぱく質が豊富で、低カロリーな野生肉や獣肉に注目するのも面白いかもしれません。「メタボリック症候群」やダイエットメニューにもおすすめです(^^)v。