『食の豆々知識』 Vol.38 とうがらし

 とうがらしといえば、鷹の爪や一味唐辛子など、赤くて辛い香辛料のこと。
 しかし最近、緑色のフレッシュなとうがらしをスーパーの野菜売り場でよく見かけます。
しかも、“唐辛子”という名がついているのに辛くない。大きさも5cmくらいのものから15cm以上のものまで様々。実はピーマンもとうがらしの一種。いろんな種類があるんですね。
 ということで、暑い夏を乗り切るために、今回は、とうがらしの話。

● とうがらしってどんなもの?
 現在とうがらしは、世界に2000種以上あるとされ、辛味種と甘味種に分類されます。
 辛味種のとうがらしには、熊鷹、カイエン、ハラペーニョ、世界一辛いといわれるハバネロ、タイ料理などで使用されるプリッキーヌなど。
 甘味種は、ピーマンをはじめ、パプリカ、しし唐辛子、京野菜の万願寺唐辛子など。近年、この甘味種に人気があり、伏見甘唐辛子や長唐辛子他、様々な種類が出回るようになりました。
 一般に、赤は辛く、緑は辛くないというイメージがありますが、どのとうがらしも熟すと緑から赤に変色します。ので、辛くないしし唐辛子もほっておけば、赤くなります。最近では、黄色のとうがらしなども出回るようになりました。
 原産地は中南米で、世界に広がったのは、コロンブスが新大陸を発見し、ヨーロッパに持ち帰ったのがきっかけだとか。日本へはポルトガル人によって伝えられました。唐辛子が入った料理に“南蛮”とつくのは、このせいですね。ちなみに、韓国料理といえば唐辛子、と思われている韓国へは、九州から伝播されたそうです。びっくりです。

● ややこしいレッドペパーとチリペパー、チリパウダー。
 結論から言えば、レッドペパーとチリペパーは同じもの。とうがらしの英名です。つまりは、一味唐辛子。粒子の粗さが違いますけど。
 チリパウダーは、チリペパーにオレガノやクミンなのどのスパイスを加えたミックススパイス。よく間違われやすいですが、一味唐辛子と七味唐辛子の違いみたいなものですね。
 更に、カイエンペパーなんていうのもあります。これも、とうがらしの粉末で、厳密にいえば品種の違い。ちょっとだけ、辛さや香りが違います。メーカーに聞いてみても、あいまいで、あまり定義はないようですが...。パプリカは、辛くないとうがらしの粉末です。
 また、鷹の爪は商品名のようですが、実は、品種の名前。ただ、形からそうよばれるように、乾燥したまるごとのとうがらしをそうよぶこともあります。
 ちなみに、九州の一部では、とうがらしを“胡椒”とよびます。最近人気のゆず胡椒の胡椒はこのことです。
 あ~、ほんと、ややこしい...。

● 種は、辛くない?
 よく、「種が辛いので、種をとる」とレシピにあります。でも実は、種は辛くないんです。辛いのは、内側にある綿のようなすじと皮。このすじに種がついているから、種の表面が辛くなるんであって、洗ってしまえば、種は辛くありません。ま、洗って種を使用することはないと思いますが...。
 さて、この辛さの正体は、よく耳にする「カプサイシン」という成分です。カプサイシンは、脂肪を積極的に燃焼させるので、身体を温め、ダイエットにも効果的だといわれています。もちろん、辛味成分に含まれる効用なので、一般に甘味種とうがらしには、この効果はみられません。
 しかし、近年、辛くないのにカプサイシンと同じ力を発揮する「カプシエイト」という成分が発見されました。辛くないので、摂取しやすいですし、摂取しすぎても刺激で胃の粘膜などを傷つけることもありません。ダイエットには万々歳です。
 ただ、「辛味」は、唾液を活発に分泌させるため、食欲増進にもつながり、また、快楽物質が脳から分泌され、やみつきにさせる働きもあるのですが、カプシエイトには、この働きはないのでしょうね。あ、ダイエットには必要ない働きですね...。
 ちなみに、この成分は、「CH-19甘」という品種に含まれており、現在は、サプリとしてのみ、発売されています。そのものを食べてみたいものです。
 そのうち、フレッシュで店頭に並ぶこともあるのでしょうか...。

 ところで、甘味種のとうがらし、しし唐辛子は稀に、めちゃくちゃ辛いものがあたるときがあります。青さが強いものが辛いとか、いろいろ説があるようですが、外見では見分けがつかないのが現状だとか。やはり、辛いししとうがらしを食べてしまったときは、“あたり”だとあきらめるしかないようです(笑)。