『食の豆々知識』 Vol.43  蕎麦(そば)

定年退職後の趣味として、料理ともに、そば打ちにも年々人気が上がってきているそうです。うちでも、普段はうどん好きな孫たちのためにうどんを打っている“じいじ”が、大晦日になると、そばを打ってくれます。

「そば通」という言葉があるように、そばには、かなりのこだわり(うんちく?)をお持ちの方が少なくありません。話題の「ミシュラン東京東京 」に、なぜ寿司屋はあってそば屋がないのかと怒るそば好きの方もいらっしゃるようで。

そんななかで、蕎麦(そば)のコラムを書くのもおこがましいのですが、ま、今回は、かるく、素朴な疑問を集めてみました。

● 年越しそばは、いつ食べるのか。

年越しそばのいわれはいろいろで、

① そばは細く長く伸びるということから、寿命や家運がのびるように。

② そばは切れやすいということから、旧年中の災厄や借金から縁が切れるように。

③ 金箔を打つとき飛び散った金粉を集めるときにそば粉を使ったことから、そばで金

を集めるという縁起をかついで。
などなど。

ところで“年越し”という名前から、除夜の鐘を聞きながら食べる家が多いようですが、そんな決まりはなく、夕食時に食べても良いそうで(誰が決めたのかは知りませんが…)、同じように、年を越えてから食べると縁起が悪い、という説もあるようですが、これも正月にそばで祝うという風習もあることから、別に縁起が悪いということでもないとのこと。

ちなみに、引越しそばは、「そばに越してきました」ということと「そばが細長いこと」にひっかけて、「おそばに末永いお付き合いをよろしく」という意を込めて、ご近所に配ります。

しかしホンネは、引越し祝いとして品を配るときに、赤飯などは高価だったため、安価で旨くて喜ばれるものを探したところ、そばが手頃だったからだとか。うんちくはあとからつけられたそうで、いかにも洒落っ気が好きな江戸っ子らしい。

結構、適当なものです…。つまりは、自分のいいように解釈すればいいということ?(笑)

● 田舎そばと更科そば、値段が高いのはどっち?栄養があるのはどっち?うまいのはどっち?

そばの実の種皮に近い部分の粉ほど、香りが強く、色が濃くなります。つまり、この部分を多く配合するほど、色も香りも濃い「田舎そば」 風な仕上がりになります。田舎そばで、よく耳にする「ひきぐるみ」 とは、殻や種皮をすべてひいたものを使用したもの。つまりは、全粒粉のそばというわけです。

中心に近い部分で打つと、甘味が際立つきれいな白いそばに仕上がります。この部分のみを使用して打ったそばが「 更科そば」 です。製粉技術が未熟な時代には、更科粉が高級とされていたため、大名に献じたことから、「御前そば」とも呼ばれます。

そのため、現在でも、田舎そばより更科そばの値段を高く設定しているお店もありますが、ほとんど変わらないところの方が多いようです。

ところで、そばは、ご存知のように、栄養面でも優れた性質を持っています。良質なたんぱく質やビタミンB1、B2、また、話題になったルチン(血管強化や血圧降下作用あり)を多く含み、更には食物繊維までたっぷり。

これらの栄養は、種皮に近い部分に多く含まれるので、田舎そばの方が、栄養価は高くなります。

ここで、見落としてはいけないのは、そば湯。実は、そばの栄養は、水溶性のため、水に溶けてしまうのです。ということは、一番栄養がたっぷり含まれているのは、そば湯だったんですね~。更にただ!(笑)

ちなみに、うまいのは、好みです。私は、田舎そばの方が、好きですが。

栄養価が高く、毎日でも食べたいそばですが、そばは、5大アレルゲンのひとつです。卵、乳、小麦などに比べ、そばにアレルギー反応を起こす人は少ないのですが、重篤になりやすいため表示が義務付けられています。過敏な人は、そば屋のそばを通れない(粉が舞っていて、それに反応するため)といいます。毎年、そばでアナフィラキシー症状を起こし、何人かの方が亡くなっています。最近では、3歳児未満には、できるだけ与えないようにと、離乳食などでも指示されています。
お店側としても、そういう状況を理解して、気をつけて頂きたいものです。

● 新そばは、いつまでが新?

秋になると、「新そば始めました」や「新そば会」などのポスターが目に付きます。
「新そば」とは、名前の通り、その年の秋(9~11月)に採れたばかりのそば粉で作ったそばのこと。ということで、年内までを「新」 といっていいことになっています。
収穫されたばかりの「新そば 」は、香り高く、色はあざやかな緑で、その味わいは何とも言い難いうまさ。そのため、そば好きは、「新そば」を心待ちにするのです。

夏は、保存しておいた秋に採れたそばで打つことが多いため、一番そばのまずい時期といわれています。

しかし、最近では、日本と季節が正反対のオーストラリアで、そばの栽培がされるようになり、夏には、タスマニア産の新そばが入手され、夏に「タスマニア産 新そば会」などのポスターも見かけるようになりました。
でも、これも、「新そば 」というのでしょうか…??

なじみの深い蕎麦だけあり、そばにおける話は山ほど。ということで、ついでながら、次回も、ちょっとそばのこぼれ話を少々。

これこそ、年越しそばコラム(笑)。