『食の豆々知識』 Vol.52 卵(1)

今年は、夏ごろから“メレンゲ鍋”が話題です。

お店によって様々ですが、他の具と一緒に鍋にこんもりとメレンゲが盛られてきます。

または、鍋とは別盛りで、好みで鍋に入れたり、タレに入れてつけて食べたりするところもあるようです。

ところで、メレンゲって何からできているか、知っていますか?

そう、卵白です。

白くてふわふわしていて、鍋に入れたりしたら溶けそうですよね。

でも、メレンゲは、ホイップクリームとは違い、鍋に入れても溶けません。

焼いたら、焼き色がついて焼きメレンゲになります。

さて、なぜでしょう。

ということで、今回は卵(鶏卵)の特性について。

 

●特質1:熱凝固性

卵は熱により凝固する性質を持ちます。

卵白は60℃で固まり始め、70~80℃で完全に固まります。

卵黄は、65~70℃でほぼ完全に固まります。

この熱凝固の温度差を利用した料理が温度卵です。

“温泉につけておいたらできた”ということから、温泉卵とも呼ばれています。

70℃のお湯に、卵をつけておけば、黄身だけが固まり、白身は半熟状にどろっとした温度卵ができるのですが、なかなかそれが難しい。

ポイントは、70℃を保つということ。

ちなみに、ゆで卵は、沸騰しているお湯で5分茹でると、半熟卵(これは、卵白は固まり、卵黄が半熟ということ)、12分茹でると固ゆでになります。

これも、簡単そうで、美しい半熟卵を作るのは、なかなか。

卵料理は、この特性をいかに上手に利用するかで左右されるとも言えますね。

 

●特質2:気泡性

かき立てると空気を含んで泡立ちます。

卵白にこの性質があり、逆に、卵黄を加えて混ぜると泡立ちにくくなります。

この特質を利用したのが、“メレンゲ”です。

これにより、シフォンケーキやスポンジケーキなどがふんわりと仕上がります。

天ぷらが、サクッと軽く揚がるのも、この特質のおかげです。

もちろん、メレンゲができるのは、この特質の利用ですが、それを鍋に入れても溶けず、焼いて焼き色をつけるなんて技をやるのは、上記の熱凝固性のおかげです。

 

●特質3:乳化性

乳化とは、そのままでは分離してしまう水と油を、安定した混合状態にすることをいい、その作用を持っている物質を乳化剤といいます。

卵黄には、その働きのあるレシチンが含まれます。

この代表料理はマヨネーズ。

ちなみに、古い卵黄の乳化性は新鮮なものに比べて劣ります。

ですから、古い卵を使用してマヨネーズを作ろうとすると、本来では必要のない乳化剤などの添加物が必要になってきます。

最近、生みたて○日以内の卵を使用、なんて売り文句があるのは、新鮮というイメージと、これを意識してのことですね。

また、自分の手でホイッパーを使用して作ったマヨネーズと、買ってきたマヨネーズ、おしいさは別として、どうしても食感が違いませんか?

これは、いかに高速回転で作り卵黄の粒を小さくするかということ。

これにより、卵黄がきめ細かくなり、食感がなめらかになるのです。

 

●特質その他

他には、のりのような役割の結着性や、水分を含んだまま熱凝固するという保水性などの特質があります。

この特質をいかしたものが、かまぼこやソーセージなどです。

 

ところで、“卵”と“玉子”、みなさんは、どのように使い分けていますか?

一般に、卵は生物としての「たまご」、玉子は料理の名前としても「たまご」を表すようです。

つまりは、“卵をつかって玉子焼きを作る”ということでしょうか。

まぁ、明確な基準などは、ないようですから、どっちをつかっても間違いではないのですが。

ちょっと、卵は、奥が深く面白い食材なので、もう1回、次回も卵のお話をいたしましょう。

次回は、もっといろんな面からみた卵について。