『食の豆々知識』 Vol.65 さいの目切り

料理教室で、高校生の女の子に、“大根をさいの目に切って”とお願いをしたら“?”だったので、やってみせたら、“なんだ、サイコロ切りかぁ”と言われました。

今は、さいの目切りという言葉は、あまり使われなくなってきているのかしら、と思いながら、やはり、日本料理における野菜の基本の切り方くらい、知っていたほうがいいと、昔ながらの呼び方で、教える今日この頃です。

ということで、今回は、さいの目切りについて。

 

● 「さいのめぎり」とはどういう切り方?

さい(賽)とは、サイコロのこと。

つまりは、サイコロ切りで、あっていることはあってるんですけどね。

出来上がりの形の定義は、1cmのさいころ状に切ること、だそうです。

でも実は、切り方にも定義があって、大根で例えるなら、まずは、5~6cmの長さに切り、側面を切り落とし、立法体を作ります。

それを、繊維に沿って1cm角の角柱(これが、拍子木切り)に切り、更に、小口から1cm幅に切っていきます。

こういう切り方をすると、かなりのロスがでます。

しかし、それぞれの大きさを揃え、直角に切ることが美しく見える秘訣です。

そこまで美しさを重要視しないとしても、大きさを揃えることは、火の通りを均一にします。

また、繊維に沿うか、逆らうかで、食感も変わります。

ですから、切り方の工程も、大切なことです。

 

● あられ、あらみじん

さいの目切りと似ている切り方で、「あられ切り」「あらみじん切り」があります。

あられ切り:約3~5mm角のさいころ状に切る

あらみじん切り:2~3mm角のみじん切り

つまりは、どちらもやはり、直角に切り揃えるのが正解。

ただし、みじん切りになると、「千切りにした材料を小口から細かく刻む」というように、さすがに、立方体ではなくなります。

きちんとした日本料理店に行くと、あらみじん切りまでもよく見ると、きれいに立方体に揃っていて、ほれぼれします。

野菜がつやつや光っているのも、繊維がどのように通っているのかを考えて、包丁をどのように入れるのかが計算しつくされているからなんです。

本当に、切り方ひとつで、美しさが変わります。

ちなみに、さいの目切りよりも大きい、3~4cm角の立方体は、「奴(やっこ)切り」といいます。

奴とは、紋の形からきているそうです。

また、豆腐を立方体の形に切って食べたことから、冷奴という名前がついたとか。

「一口大に切る」、とは違います。

一口大は3~4cmの乱切りのこと。

つまり立方体じゃなくていいので。

 

● マセドアンサラダ

むか~し昔、あるビストロで働いていた頃、フランス料理の専門用語が飛び交い、日本料理出身の私は、何のことだか全く分からず、苦労した覚えがあります。

さいの目切りをフランス用語でいうと、「マセドワーヌmacedoine」。

で、「マセドアンに切って」 とか言われます(笑)。

マセドアンサラダは、もちろんこれから。

さいの目に切られた野菜のサラダのこと、とよく言われますが、もともとは、マケドニアが小国家からなっていたことから派生したことで、野菜や果物が小さく切られたサラダのことをさします。

他に、さいの目切りは、ドミノ切りやダイス切りなんて言い方もあります。

ちなみに、フランス用語で、みじん切りは「アッシェ」、あられ切りは「ブリュノワーズ」。

ところで、中国語では「丁(ディン)」。

角切りという意味で、大きさに指定はありません。

中国料理は、料理名に切り方がつくものが多く、宮保鶏丁(鶏のカシューナッツ炒め)などがそうです。

サイコロステーキ、というのがありますが、さいの目ステーキとは聞きません。

ステーキが日本料理ではないからなのかもしれませんが、そうでなくても、料理名には、「サイコロ」の方がかわいらしくていいですね(笑)。