『食の豆々知識』 Vol.67 カツオのたたき

日曜の夜は、何かと忙しいので、見ることはあまりなかったのですが、今年は、久々にNHKの大河ドラマを見ることにしました。

もちろん、福山雅治がでているからですが(笑)。

毎年、大河ドラマの土地は、大なり小なりはあるものの、何かと話題になるものです。

ということで、今回は、高知、土佐料理といえば、ということで、カツオのたたき。

 

● カツオのたたきとは、どういう調理法?

カツオのたたきは、以前のコラム、「鰹」の時にも、ふれましたが、カツオを節おろしにし、皮をつけたまま串を打ち、強火で皮の方から表面を焼きます。

高知ではこの時、火力が強い藁を燃やした火で焼くことが多いようです。

最近では、藁の香りが苦手な方に、炭で焼いたものも人気です。

これを厚めの平造りにし、薬味やポン酢などをかけ、包丁の腹や手のひらでたたいて味をなじませ、器に盛り付けます。

焼いた後に、カツオを冷水で冷やす方法もありますが、皮と身の間にある脂のとろける味わいを生かすため、そのまま食べる方がおすすめです。

カツオのたたき、というと、薬味をいっぱい添えて、ポン酢で食べるものだと思っていたのですが、高知に行った時に、塩たたきというカツオを食べ、香ばしく焼けた皮と、とろける脂に塩がとても合い、感動した覚えがあります。

高知では、さっぱりとした初カツオはポン酢などのたれで、脂の多い戻りカツオは、塩で食べることが多いそうです。

表面を軽くあぶった焼き霜造りと、一緒にされることも多いのですが、“たたき”とは、薬味やたれ(あるいは塩)をたたいてなじませることからきているので、厳密にいうと調理法は違うんです。

また、カツオ以外でも、牛などにもこの調理法は用いられ、牛のたたきとローストビーフを一緒にされる場合もありますが、これも、全く違います。

牛のたたきは、カツオと一緒で表面だけに焼き色をつけたもので、中は生、ローストビーフは、中は同じようにピンク色をしていますが、オーブンの特性により、実際は内部まで火が通っているんです。

 

● カツオのたたきを頼んだら・・・?

以前、ある居酒屋で、カツオのたたきを頼んだら、カツオの身を薬味と一緒にたたいて混ぜ合わせたものが出てきたことがありました。

確かに、間違いじゃあないんですが・・・。

これはよく、アジのたたきなどで出てくる調理法です。

この場合のたたきは、包丁で細かく刃たたきしたもののこと。

2本の包丁を交互に振り下ろし、細かく切り刻むこともあり、このとき包丁がまな板にリズムよくあたる音からきたものです。

味噌や薬味を混ぜ合わせ、ねばりがでるまでたたくと、“なめろう”になります。

カツオもよく血合いの部分を用いて、たたきは作られます。

どちらのカツオのたたきも“たたく”という調理操作がそのまま料理名になったのですが、カツオのたたきというと、上記のあぶったものの方が一般的だと思いますので、包丁でたたいたものを提供する場合は、一言添えたほうが良心的・・・?

ところで、たたききゅうり、たたきごぼうなんてのも、“たたく”という調理がそのまま料理名になっています。

この場合は、包丁の峰やすりこぎなどで、組織をつぶすようにたたいたもの。

この場合たたくことで、やわらかく食べやすくなるとともに味がしみこみやすくなります。

 

● 土佐造りってなに?

土佐造りとは、カツオのたたき(この場合はもちろん初めに説明した、表面をあぶったものの方)のこと。

調理法を指す場合もあります。

土佐で、初めて(あるいは、よく)このようにカツオを食べたから、だそうです。

また、土佐がカツオの節の産地であることから、かつお節を用いた料理に、土佐という名前がつけられます。

土佐醤油、土佐酢、土佐煮など。

ちなみに、土佐日記は、土佐の有名な銘菓です。

これには、もちろんかつお節は入っていません(笑)。

カツオのたたきは、土佐藩主の山内一豊が食中毒防止に痛みやすいカツオの生食を禁じたのに対して、表面のみを焼いて焼き魚と称して食べられたのが起源とする説があります。

表面を焼くことで、痛みやすいカツオの菌を殺し、生では口当たりの悪い皮を焼くことで、香ばしくやわらかく、また、くせをなくし、皮の下にある脂を溶かすことで、旨みを増す、なんて理に合っていると、昔の人はすごいなぁと、つくづく感心する調理法ですね。