『食の豆々知識』 Vol.96 山椒

青い実がふさふさとなっている山椒が、出回り始めました。

青山椒が、スーパーに出回るのは、ほんの一瞬。

今年は、2kgもの京都産の青山椒を買い求め、アクぬきをし、小分けにして冷凍しました。

だから今、うちの冷凍庫は、青山椒が占領しています(笑)。

でも、毎日少しずつ、お吸い物に入れたり、煮物に入れたりと、楽しんでいます。

ということで、今回は山椒の話。

 

● 葉、花、実、そして木と、すべてを使用する山椒とは。

山椒は、木の芽から、熟した実を挽いた粉山椒まで、季節を変え、部位を変え、様々な形で、味わいで、料理を楽しませてくれます。

最近は、栽培ものが1年中出回っていますが、3~5月の頃、若芽を摘み取ったものが「木の芽」。

吸い口(吸い物に浮かべて香り付けにしたもの)や、焼き物や煮物のあしらい、また、すり鉢でよくすりつぶし、味噌和えなどに用います。

アクが強い竹の子や、脂身が多い牛肉などには、1枚といわず、多量の葉を天盛りにしたいものです。

4~5月のごく短い間に、黄色い花が咲きます。

このつぼみから花の部分を「花山椒」といい、やはり、吸い口にしたり、そのまま、あるいは薄口で煮て、あしらいにして用います。

木の芽よりも刺激が少ないので、淡い味わいの川魚や、脂身が少ないしゃぶしゃぶ肉などにおすすめです。

6月になると青い未熟な実がつき始めます。

これが、初夏に出回る「青山椒」。

アクをぬいてそのまま吸い口や煮物などに用いる他、塩漬けや酢漬け、醤油煮などいろいろな形で保存します。

さわやかな風味の中に、かじると口中は一時ぴりりと軽いマヒ状態に。

これが、私はついやめられなくなっちゃうんですよね(笑)。

そして、その粒が大きくなり、熟したものを「実山椒」とか「粒山椒」と呼びます。

同じように、吸い口やあしらいに用いますが、香りも辛味も強く、粒も固くなります。

こちらも青山椒のように保存方法は様々ですが、醤油煮は、佃煮のように辛煮にします。

秋になると実山椒は、熟し3片にはじけます。

この中の黒くなった種を除いたものが、「鈴山椒」や「割り山椒」。これを乾燥させて挽いたものが「粉山椒」になります。

ちなみに、この実山椒がはじけた形をイメージした「割り山椒」という名の器も有名です。

そして、木は。

これは、さすがに食べません(笑)。

でも、すりこ木として、固く減りが少ないため、また、ほのかに香る香りが何とも言えず、重宝されています。

 

● 花山椒と花椒は一緒?

いやいや、花山椒は、上記の通り、山椒の花(つぼみ)の部位。

花椒(ホワジャオ)は、中国産の山椒で、割り山椒やそれを粉にした粉山椒の部位を指します。

日本産よりも、口中がしびれるような辛さがあり、この感覚が「麻(マー)」の辛さです。

中国では、辛さを「麻(マー)」と唐辛子のような「辣(ラー)」の辛さで呼び分けます。

この間、上記の青山椒を使って、麻婆豆腐を作りました。

さわやかでぴりりと辛く、これはこれでなかなか。

でも、やはり、この中国産ならではの、麻薬のようなくせになる(あ、もちろん麻薬は知りませんよ 笑)しびれ感は、中国料理にはかかせません、という結論に(笑)。

 

● 身体にもよく、縁起もいい山椒

山椒は、料理を引き立てるだけでなく、肉や魚などの臭みを消し、防腐の働きもしてくれます。

また、内臓の働きを活発にし、食欲を増進し、おまけに虫下しの薬用もあるようです。

そして、脂肪燃焼を高める効果が発見され、ダイエットにも注目されています。

お正月に飲むお屠蘇にも山椒が入っています。

これは、中国の慣わしからきたそうですが、実をたくさんつけることから、「子孫繁栄」の意があるとか。

「山椒は小粒でもぴりりと辛い」

山椒の実は小さいが、非常に辛いことから、そんなことわざがありますが、ほんと、辛いだけじゃなく、山椒はすごい奴です。

 

今回、青山椒を2kg、下処理をしようと、洗って、ごみをとって、枝をとって、としていたのですが…。

あまりにも大変で…。

ま、うちで食べるんだからいいかぁと、途中で飽きて投げ出し、冷凍庫の中には、小粒に小分けされたものと、枝のままふさふさとしているものがいます(笑)。

京都のお土産のちりめん山椒を食べながら、ここまで、きれいに青山椒を仕上げるには、すごい手間がかかっているんだなぁと、高価なことにもつい納得してしまう今日この頃。