『食の豆々知識』 Vol.112 コショウ

先日、2週間ほど、井上(主人)がブラジルに出張していました。

ブラジルの北、アマゾン河の河口にあるベレンという都市から車で4時間。

多くの日系人が住む町、トメアスがあります。

ここで行われている「アグロフォレストリー」という農業が、森林再生につながり、地球温暖化の解決策になるのではないかと、今、世界中で注目され、期待されています。

アグロフォレストリーは、単一栽培ではなく、農地に複数種の樹木や果樹を混色する農法です。

その中で、栽培、収穫、乾燥されているコショウを見に行ってきたみたいです。

今回は、そんな訳でコショウの話。

 

● 白コショウと黒コショウの違いって?

果実を採取する時期と処理の違いによって、黒・白・緑(グリーンペッパー)に分かれます。
黒コショウは完熟前の緑色の実を採取し、黒くなるまで天日で乾燥させます。

乾燥するにつれ、表面が縮み、皺のある黒褐色になります。

白コショウは、完熟した実を水に1~2日間浸してふやかし、外皮を取り除いてから乾燥させたもの。

グリーンペッパーは、未熟な実を、色を保つために、塩漬けや凍結乾燥させたものです。

つまり、ゴマやぶどうのように、白と黒のコショウの種類があるわけではなく、もとは、みんな同じ種類な訳です。

ただし、ピンクペッパーだけは、ペッパーと名前がついていますが、コショウではなく、ウルシ科の別の植物です。

わずかにコショウのような風味をもつことから、この名前がついているようです。

辛みは、白コショウよりも黒コショウの方があります。

コショウのさわやかな香味成分は、外皮に多く、そのため、外皮をつけた黒コショウの方が、香味が強くなります。

 

● コショウに効用があるの?

コショウから感じる風味は、ピペリンという化学物質で、抗菌、防腐、防虫作用があることが知られています。

そのため、古くから、肉の臭い消しや防腐剤として珍重されてきたようです。

また、薬用として、胃腸を温めて調子を調える、解熱、筋肉のコリを除く、などの作用がある他、アンチエイジング、免疫力の改善、がん予防までの効果があることがわかっています。

 

● ブラジル産の白コショウは香りがいい?

ブラジル産の白コショウは、一般に多く出回っているインド産やインドネシア産の白コショウに比べ、さわやかな香りがします。

それが、アグロフォレストリーの多種栽培のせいなのか、または、品種の違いなのかと思っていたら、そうではなく、処理の違いによるもののようなんです。

白コショウは、皮をむくために、水に浸けてふやかします。

その水が、川のように澄んでいると、香りがよく、池などたまっている水を使用すると、むれたような香りが残るようなんです。

 
日本に輸入しているブラジル産の白コショウは、ふやかす時に川に浸すそうです。

おもしろいですよね。

これは、ブラジルにいってみて、発見したことだそう。

ところで、品川駅から歩いて5分くらいのところに、天華というラーメン屋があります。

そこの「こしょうそば」のコショウは香りが華やかなんだそうです。

このコショウ、マレーシアのボルネオ産だそうで。

まだ、勉強不足ですが、ここのコショウも処理が違うのかもしれません。

実は、うわさに聞いているだけで、まだ、食べに行けてなく。

ぜひ、食べてみたいラーメンなんですが。

 

ここだけの話。

ブラジルから生のコショウを持って帰ってきて、今、ベランダで天日干ししています(笑)。

マニュアルでは、緑の実を黒コショウに、赤く熟した実を白コショウに使うと記されていますが、一房の中で、緑から赤くなっていくので、完全に赤と緑をわけるのは、至難の業です。

ただ、赤くなってしまった実を干しても、きれいな黒コショウになりそうですし、まだ、緑の実を水でふやかしても、外皮ははがれます。

そのため、現地でもこれは厳密なマニュアルでないようです。

日本の気候では、コショウは上手に栽培できません。

しかし、日本の正反対の国、ブラジルで、日本人による、栽培、採取、乾燥された、コショウ、ちょっと面白くないですか?