『食の豆々知識』 Vol.113 偽装表示

阪急阪神ホテルズでメニューと異なる食材が提供されていることが問題となりました。

このニュースを初めて見たとき、「これだけじゃ終わらないな」と思っていたら案の定、次から次へと発覚。

毎日のように、紙面をにぎわす記事となってしまいました。

町の飲食店や居酒屋まで調べたら…。

大変なことになりそうです…。

 

● 新鮮ってなに?

ところで、

「鮮魚のムニエル」とかかれたメニューで、冷凍の魚を使用していた。

これも、偽装なんですかね?

京野菜のブランドという規定がある「九条ネギ」を「青ネギ」で提供したら、うそになります。

それは、いけないと思います。

しかし、まぐろなどは、船上で冷凍されることも多く、それを解凍して解体されます(解体後解凍されることもありますが)。

解体後すぐに、新鮮な刺身として提供したら、偽装にはなりませんよ、ねぇ?

でも、「とれたて」として、冷凍された魚を出したら、それは、うそです。

なので、鮮魚のムニエルは偽装にはならないように、私は思います。

ただ、サービス業として、お客様の期待を裏切った形になるのは、いけないとは思いますが。

思えば今から、20年くらい前に、居酒屋のメニュー名が、急に変わり始めたように感じます。

「卵焼き」から「あつあつ玉子焼き」、「冷やしトマト」が「つめた~い完熟トマト」。

「ピリ辛」「激うま」などが流行り、メニュー表記が多彩になりました。

おもしろい、これ何?とおもわせるようなメニュー名が話題になり、なが~いメニュー名も誕生しました。

その頃から、どんどんメニュー名だけが、一人歩きし、エスカレートしてしまったのでしょうか。

これを機に、メニュー名は見直され、メニュー名の次世代が始まるかもしれませんね(笑)。

 

● あいまいな基準。

さて、サービス業として、お客様にうそをつくことは、問題外だとは思いますが、そもそも、あいまいな基準なのも、問題なのではないかと思います。

食品表示法は、主に生鮮食品や加工食品を対象とする「JAS(日本農林規格)法」、アレルギーや添加物などを表示する「食品衛生法」、栄養成分や塩分などを表示する「健康増進法」で規制されています。

しかし、これらは、飲食店などの食事や対面販売においては、対象外とされています。

これまでこうした規制がなかったことについて、消費庁幹部は「対面販売なので、その場で原産地などについて店員に尋ねれば分かると考えていた」と説明していました。

その店員も、しっかりと把握していたと思えませんが。

ところで、今年の6月には、食品の表示法を統一することが可決し、2年後には施行することが決定しました。

しかし、この案にも、外食の表示については、対象外でした。

先日、消費庁は今後、この改定までにも間があると考え、あらかじめ、上記3法のいづれかに外食のメニュー表示の規制を盛り込むことを検討すると発表しました。

必要なことであると思いますが、食品表示義務が変わった時に、食品メーカーが大変であったように、この改正で、飲食店の現場の混乱も大変なものになると予想され…。

 

● ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されたのに。

しかし、くしくも、先日は、ユネスコの「無形文化遺産」に「和食」が登録されるという記事がでたばかり。

京料理や懐石料理ではなく、庶民が食べてきた料理も含めて、正月など年中行事とかかわり、家族や地域の人たちの結びつきを強め、「自然の尊重」を示す社会的習慣としての「和食」だそうです。

その特徴のひとつが「新鮮で多様な食材とその持ち味の尊重」。

それを思うと、この外食産業全体でもこの発覚は、日本の食文化が、うそに包まれるようで、飲食店ではあたりまえとされていたと思えるこの習慣が少し、かなしく感じます。

先日、スーパーに小学4年の息子と買い物に行きました。

私が、買い物をしている後ろをくっついていた息子に、カレーの試食を「どうぞ」と渡してくれました。
しかし、アレルギーを持つ息子、そのおばさんに「すみません、これ、ピーナッツ入ってますか?」と尋ねました。

すると、その答えが、

「ピーナッツ?カレーだから、入ってないんじゃない?」

・・・残念です。

そして、その会話をちょっと遠くから聞いていた私は、危ないと思い、すぐに、試食の箱を確認すると…。

入ってました。ピーナッツが。

アレルギーは、もちろん、本人の注意が必要で、本人の責任ではあります。

しかし、これだけ、食の問題がおこっている中で、農家さんや食のメーカーさんは、企業努力を強いられ、叩かれている中で、それら食品を扱う末端の人の意識が少し少ないのかな、と感じる今日この頃です。