『食の豆々知識』 Vol.205 あんず

今、日本では、ほとんどのものが1年中手に入るようになり、野菜や果物の旬がわからなくなってきています。

それでも、今この時期にしか手に入らない、というものもまだありまして。

それを見つけると、ついせっせと買って、食べたり、保存食として仕込んだりしてしまいます。

特にこの時期の手仕事は多く。新生姜の甘酢漬けに始まり、山椒、梅、赤紫蘇、らっきょうと続き、あんずまでたどり着くと、やっとこれで夏が越せると思います(笑)。

そして今日は、やっと昨日、あんずのジャムとコンポートの仕込みを終えた「あんず」のお話。

日本ではもともと、中国から来た東洋種のあんずがほとんどで、酸味が強いものが多かったため、生で食べるイメージがあまりありません。

が、しかし、ここ近年は、「生食用あんず」を高級フルーツ店などでみかけるようになり、しかも人気があるようです。

これは、西洋種のあんずがほとんどで、「ハーコット」や「ゴールドコット」などが有名。

桃のような甘い香りで、糖度も高く、食べるととても甘い中に、あんず特有の酸味も少し感じられ、ジューシーなフルーツです。

日持ちがしないため、もともとのあんずの旬も短い期間であるのに、更にこの生食用はほんの一瞬しか見かけられません。

見かけると思わず買いたくなりますが(メロンのように大きくもなく、小さく手頃なサイズなので、つい手に取りやすい)、そう簡単にいっぱい買えるお値段ではありません(笑)。

 

●あんずの種は漢方薬?

 

あんずの種は、「杏仁(きょうにん)」と呼ばれ、漢方薬になります。

中国ではこの種をとるため用に、あんずを栽培されているくらい。

前にちょっと、薬膳の話をしたことがありましたが、その「化痰止咳平喘(かたんしがいへいぜん)類」にあたり、痰をとりのぞき、咳をおさえる働きがあり、風の引き始めや、喘息などにも処方されます。

また、大腸にも働きかけるため、便秘などにも効果的です。

ただし、あんずの種には毒があります。

ですので「杏仁」の扱いは、とても慎重で、身体の弱い人には飲ませてはいけない、とされています。

 

●あんずは老化防止にいい?

 

あんずには、β‐カロテンが多く含まれ、その数値は緑黄色野菜のほうれん草や小松菜の約1.2~1.5倍ともいわれています。

β‐カロテンは、ビタミンAに変換され、抗酸化作用や保護作用があり、冷え性やアンチエイジング、美肌効果によいとされています。

また、カリウム、食物繊維、鉄分なども豊富なため、干しあんずなどで1年中食べたい食材です。

ところで。青梅は食べてはいけない、と言われていますが、その青梅の毒とこのあんずの種の毒は同じ成分「アミグダリン」です。

アミグダリンは、身体の中で「青酸」を作り出します。

多く摂取すると、頭痛やめまい、嘔吐などの症状が現れ、場合によっては、死に至ることもあるそうです。

ただ、青梅では100ヶほど食べないと致死量に達しないそうですが、あんずの種は子供なら1ケ、大人でも3~4ヶで達してしまうとか。

あんずの種から作る杏仁豆腐などのレシピがネット上で人気だったりもしますが。扱いには気をつけなくてはいけませんね。