『食の豆々知識』 Vol.210 会席料理

私ごとですが、息子が18歳の誕生日でした。

うちは、もともとそれぞれの誕生日のメニューが決まっておりまして...。

娘がローストビーフ、息子がステーキ、夫がビーフシチュー、私がしゃぶしゃぶ...。

つまりは普段食べられない、好きな高級肉を食べる日にしようと(笑)。

それが、いつの間にか、娘と息子は、食べたいメニューが毎年変わるようになり。

昨年の息子の希望は、キンキとシマアジ...。

今年は、何にするの?と聞いたら、「会席料理とかってあり?」と。

え。

それ、私が作るの?てか、会席料理って家で作るもの?ステーキ焼く方が簡単なんですけど。

と...心の声。

ちょっと外にももれましたが。

そんな会話を聞いていた娘が、「かいせき料理って何?」と。

字わかる?と聞いたら、「海(うみ)に...石(いし)?」...か、海石?

その隣で夫が、違うよ、「懐(ふところ)に石(いし)だよ」と。

う~む。

合っているようで、いや、懐石料理は作れないなぁと心の声。

前置き長くなりましたが、今回のお話は「会席料理」。

●懐石料理って?

懐石料理とは、茶の湯の席で、お茶をおいしく頂くために出された、「簡素な食事」のことを言います。

「懐石」とは、禅僧が寒さと空腹をしのぐため温めた石を懐に入れたことに由来し、それと同じくらい空腹をしのげるという意味からその名がついたとか。

つまり、懐石料理は、あくまでも抹茶をおいしく飲むために、お腹が空き過ぎていない程度に出されるものであり、また、茶事の一部として、茶事を催す亭主のおもてなしとして、亭主自ら食材の調達、調理、接客のすべてを行うのが原則とされています。

構成は、流派や茶事の種類によっても違いますが、飯、汁、向付(お造り)、煮物椀、焼き物の一汁三菜に、箸洗い(口直し用のあっさりとした吸い物)、八寸(海のごちそうと山のごちそうをちょっとずつ盛り合わせたもの)、香の物、湯桶(ゆとう:おこげにかけるための湯、お茶漬けのようなもの)を加えたものが基本です。

全然「簡素」じゃないじゃん、と思いますが(笑)、本膳料理(形式を重視した豪華な正式料理)と比べて、「簡素」なんでしょうね。

そして、ちなみにさらに簡素化されたこの一汁三菜が家庭のご飯として残っていった訳です。

そして現在では更に簡素化されつつ...(笑)。

●会席料理

さて、では、会席料理はというと、「懐石」がお茶を楽しむための料理であることに対し、「会席」は、お酒を楽しむための料理を指します。

江戸時代当初は、お行儀よく、茶の席のように会の終わりに酒を少々飲む程度だったそうですが、次第に乱脈になり、料理の最初から酒が出されるようになったとか。

そして今に至る、と(笑)。

もともとは、懐石料理や、本膳料理を参考にされていたそうですが、次第に地域や料理人の考えが前面に押し出したものが考案され、膳としてではなく、一品ずつ提供されるようになります。

特徴としては、ご飯を食べるための総菜ではなく、酒を飲むための酒菜を中心とし、懐石はご飯が先に出されるのに対し、会席のご飯ものは、食事として最後に出されます。

また、現在は、一品一品出される「喰い切り料理」と宴会などに使用される配膳式の「掛け合い料理」の2つの形式になっています。

そして、問題なのは、この会席料理をお店によっては、「懐石」と呼ぶところもあり。

そちらの方が、漢字としても重々しく感じられるからですかね?ごちゃごちゃになってきているので、もともとの懐石料理の方が、「茶懐石」と呼ばれるようになっていたりもします。

ということで、今日はこれから、「懐石」もとい、「会席」料理を作らなくちゃいけない訳なんですが。

まぁ、つまりは、お酒がおいしく飲める料理(あ、息子は飲めませんがね)を料理屋さん風に出していって、最後にご飯ものを出したらいいんでしょ、といった気分(笑)。

あれ?懐石も、「簡素な料理」が基本なんで、それでもいいのか?

さて、なにつくろうかな(笑)。