石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その六十四

最近の飲食店事情が臨場感をもって感じられる時がありますが、今回ももろにそれに出合いました。

いつも行く寿司居酒屋があるのですが、そこは毎回、平日も休日もいつも行列で、ウエイティングの25席が足りずに外に立ち待ちの列ができるほどの繁盛店です。

そんな店が昨日は列がないどころか空席があったのです。

「どうしたんだろう」

仕事柄“なぜだ?”“なぜだ?”が浮かぶと飲食を楽しめなくなってしまうのが石田の悪い癖です。

商品の品質も変わってない、スタッフのサービスもおばちゃんの笑顔も客層も何も変わっていないのです。

「ここに来るには誰か席取り屋が来なきゃだめだなあ」

と我慢と並ぶのが嫌な石田は行くたびぶつぶつ言っていた店が、ほんの三カ月間にこうなってしまったのです。

そうです、この三ヶ月間に起こったこと、起こしたことが原因に思われるのです。

それは・・・。

 

【利益の取り方は慎重に】

一般的に鮨屋や寿司居酒屋は生もの扱いが難しく、人気のマグロやうに、いくらは出れば出るほど儲かりません。

全品○○円などとウタッテ安く商売しているところは、他の商品を怪しいもので構成しないと交差原価が成り立たないということもあります。

ゆえにそんな店は格下の店としての集客しか得られないわけです。

前述の店は全品○○円の均一料金でしたが、怪しいものを極力使用せずにリーズナブルな店として人気が高かったのです。

ところが三か月前、事情は察することができますが、システムを変えたのです。

原価の高い商品を1カンづけにし2カンづけの値段より30%安くしたのです。

数字は安く見えますが2カン食べると前より実質値上げです。

均一料金だったものが、いつのまにか特選ネタが登場していて、特選ネタ1カン○○円となっていたわけです。

何が特選ネタなのかわかりづらく、頼んでから1カンで提供されてから気づくことも。

現在、到来している値下げ合戦の最中にこのシステム変更は無理がありましたね。

お客様の中にはなんだかうまくだまされたかなと感じた方もいたかもしれませんし、実質値上げですから足を遠ざけた方もいらっしゃるはずです。

サラリーマンの街、新橋・有楽町の界隈では、25年前石田が「アメリカではハッピーアワーっていうのがあるんだよ」なんていって皆さんに紹介したタイムサービスがドエライことになっています。

生ビール半額なんて珍しくない状況で200円やおつまみ2品ついて500円の他、“1杯頼むともう1杯ついてくる”“最初の1杯なんでも105円”“何時に入っても最初の1杯タダ“なんてのも現れてるのが現状です。

ホント怖い時を迎えているわけなんです。

そんな時ですからうまくやったつもりでも値上げは敏感にお客様としては感じてしまうのでしょうね。

ただし値上げなしの商売がいつまでも続けていられればいいのですが、そうもいきません。

品質を守るために納得の商品提供をするために値上げというのは確実に必要な時期が来ます。

それがまともな商売というものです。

今回のような「してやったり!」というような数字をいじる世界だけのマジック手法での利益の取り方は少なくとも今の時代は通用しないようですね。