石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その七十六

先月は「週刊プレイボーイ」さんの取材を受けました。

20代の頃、時々読んだ記憶がありましたが、最近は書店で見かけても全く手に取ることがなかったので久しぶりに見て懐かしく思いました。

今回の内容は職業年鑑のコンサルタント特集だということなので、自分の事を語るわけでいつもの取材と違って話しているうちに昔の「職業としてなかなか分かってもらえなかった」事など思い出してなんだか心がしんみりしてしまいました。

ただ最後は写真を撮るということだったので、やぱり「見てくれ大事」を考え思い切り笑顔でしめくくったのでした。

「見てくれ大事」はお店にも言えることで、どんなにいい店内、いい料理、いいサービスでもお客様には入ってもらわなきゃどうにもなりません。

外面の「見てくれ」を大事にして、入りやすくしてあげるのも我々飲食店の仕事です。

ですが先日・・・。

 

『見てくれ大事、中身はより大事』

東京・渋谷から明治通りを恵比寿に向かって歩くとちょこちょこと良さげな外観を持つ店が目につきます。

なかでも前々から気になっていた店があったのですが、先日スタッフと一緒に歩く機会がありちょうどいいと入店しました。

中華の店で外はモダンな造り、店前を美味しそうな料理がパネルでディスプレイされています。

価格はリーズナブルで、CPもよさそう。

垣間見える厨房で職人が働く姿も期待できそうでした。

ところが入店してすぐ“ふざけるな劇場”の始まりです。

カウンターが6席はいいにしてもテーブルが3卓すべてが6人掛け、変なレイアウトだなと思いながら我々2人はテーブルの奥に座りました。

座るとまず目に入ったのが、トイレを隠すもろ和風な暖簾。

中華なのになんで和風なのと思いながら、さらに店内を見回すと目につくレジ周りの乱雑さ。

あれ、この店、外観の印象とはたいぶ違うなあと少し不安を感じながらも、お決まりのビールを頼み、料理を三品注文しました。

最初にやってきた酢豚にびっくりです、センスのない100円ショップで売っているような和食器にケチった量の肉と野菜、メニューの写真とは大違いです。

「なんで和食器なんでしょう。こんな安物で斬新さを狙ったとも思えません」。

「そのとおりだね」。

ため息を禁じえず、箸を肉に伸ばし口に入れたのですが、おもわず出てしまった言葉が「くっ臭い~~」、同席のスタッフも同じく「くさいですね」。

そうなんです、間違いなく肉が臭いのです。

他のお客様がいるので石田も声を殺して会話しましたが、やはり一言言いたかったので小声で、

「すいません、この肉ちょっとにおいますよ・・」と店主に告げたのでした。

「えっ!」

不服そうな顔をした彼は、「ちょっと調べます」と言って厨房に入り他の二人と会話して戻ってくるとこう言い放ったのです。

「調べましたが問題ありません、中の者も臭わないと言っています。でも、もう一度別の肉で作りますよ、これはそのまま食べていただいていいですから」。

なんだそりゃ、問題ないなら、なんで作り直すんだ?と思いながらも作り直しを待ち再度の挑戦をしたのでした。

「やっぱり臭いですね」。

間違いなく臭いのです。

ここで彼らが問題ないと言った訳も最初の酢豚をそのまま食べていいと言った訳も分かりましたよ。

彼らは味や匂いが分からない職人なのです。

(そんな職人いるかあ!?)

だから作り直したのも誠意からなのです。

(おい、おい)

減らない料理を眺めながらビールを空けているとカウンターにいたお客様が追加で餃子を頼みました。

すると店主から信じられない言葉が飛び出しました。

「今からですかあ?できる頃にはその料理食べ終わっていると思いますけど・・・」

あ~あぁ、もう帰ろう。

話になんない。

二度とこの店には来ることないだろう私たち二人言葉を交わさずとも思いは同じ、出ようぜというアイコンタクトとともに早々と立ち去ったのでした。

見てくれに騙された可哀想なお客様物語を演じてしまいましたが、内容が伴わない外面だけの店はいずれ痛い目を見ることになります。

私たちのように二度と行かないお客様を日々増やしているのですから。

小手先の手段だけではダメということですね。

ではまた。