石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その九十六

「できるだけ多くのお客様がお座りになれますよう、お荷物は網棚の上にお載せくださいませ。」

都心のJR線の中にアナウンスが流れました。

座席の上に目をやりながら、ふと思ってしまいました。

網棚という言い方で解らない人ってもういるんじゃないのかな、と。

考えて見ればいつのころからか車両が新しくなるたびに改良され、網棚は今パイプ棚になっているのです。

平成生まれの若者は網棚ってなんだよ、と心で反応しているかもしれません。

誰でもわかるように言うなら「上部の棚」でしょうかね。

まあどうでもいいよ、と言う方もいるかもしれませんが、同じようなことが自分の仕事にかかわることであるとしたら考えないといけませんね。

 

『お客様には解りやすくが大切』

会社帰りの親父や若者でにぎやかな夜の海鮮居酒屋で顧問店の社長と従業員教育談議をして盛り上がり、次は焼酎だなとロックを頼んだその時です。

「チェイサーもお持ちしますか?」

「あぁ、たのむね。」

一応、石田も専門家なので普通に反応しましたが、ちょっと違和感が残りました。

周りのこのオジサンたちや若者は“チェイサー”で解るんだろうか、生返事で解ったように過ごしてるんじゃないだろうか。

料理がやってきた時も、「こちらでシェアしましょうか?」という言葉が出ました。

イタリアンレストランでランチしているわけじゃねーぞという言葉が出かかりましたが、彼の自然な振る舞いに不快感は無いので、「あ、お願いします」と普通に返しました。

こんな風に世の中に新しい言葉の使い方が広がって行くのだなあと思った石田でしたが、では不快感や嫌悪感を持つ方がいないのかと言うとそうではないはずです。

同じ業界にいればどんどんプロになって行きます。

向上心のある人は更に多くの知識と技術を身につけていきます。

知識と技術が身につくということは、その人にとって「アタリマエ」を増やすことになって行くのです。

ですから、当たり前にお客様に知識や言葉が、時には隠語が出てしまうのです。

昔、はじめてこの業界に入った時、そこの責任者が、

「お客様がレモンスカッシュと言ったら、そのままレモンスカッシュですねと返すんです。

レスカですね、なんて省略してはいけません。

お客様がレスカと言ったらそのままレスカですね、と返してください。

それが一番親切なんです。」

プロになったからと言って偉くなったわけではありませんね。

ホントに偉い人はお客様がどんな気分にあるかを読みながら接する人なのでしょう。

お客様に解りやすくが一番でしょう。

「お水もお持ちしましょうか。」

「こちらで分けてお持ちしましょうか。」でいいじゃないですか。ね。