石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その125

「パパぁ、パパのアソコふいといてあげたからね。」

日曜の朝、娘からの一言でビックリの私。

「げぇ~、いつの間に?

寝てる間にぃ!?

まだ介護はいらないよぉ、やめてください。」

「バカじゃないの!

パソコン、パパのパソコン!」

パ・ソ・コ・ン、最低~」

どうやら、石田の聞き間違えでした。

そりゃ、そうですね。

昔、ウチの奥神様がアメ車の大きいのを見て、「あ、リンカーンチンコネンタルだぁ」と言ったのを聞いた以来のビックリでした。

勘違いやトンチンカンはたまにあるものです。

ところがこれほどまでのトンチンカン、勘違いがあるとは、という店に・・・。

 

『お客様目線で自社店舗を再チェック』

ミーティングが終わった午後5時半過ぎ、顧問先の社長の「旨いもんでも食いに行きましょうよ」の一言で渋谷の街をぶら~りしていると、飲食ビルがあったので覘くと、エレベーター前に、〈サンマ刺しが安い〉〈アジのたたきが・・〉〈金目が・・〉等など、楽~な感じのPOPが賑やかな店を発見したので、そこに入ることにしました。

店に入ると、にこやかにスタッフが迎えてくれて「こちらへ靴をどうぞ」と下駄箱を案内されました。

そこで、それぞれ靴を入れようとすると「お客様、ふたつ入ります」と注意が。

「えっ!?それなら先に言ってよ~」という言葉を飲み込みつつ、靴を入れ替えると席に案内されました。

「入口のイメージとは違ってなかなか豪華ダイニングの雰囲気だね。」

「そうですね、当たりかも、ですね。」

サプライズと頓珍漢は紙一重、この時はまだ期待感があったので、ちぐはぐさが不安にはなっていなかったのです。

お決まりの接客とスマイルは間違いなく良かったのですが、注文をしてから、怒涛の唖然茫然(ぼうぜんあぜん)が始まりました。

「まずは、ノドをスッキリということで、先生、氷点下エクストラコールドがありますよ。

これからいきましょう。」

いくつかの料理と思いきり冷たいビールを注文しました。

ところがやってきたビールに口をつけた瞬間、「あれ、冷たくないね?」

「・・・ですね。」

氷点下なのに、普通の生ビールと変わらないのです、むしろ普通のビールよりも温いのです。

グラスも冷やしてある様子がありません。

スタッフを呼び、そのことを言うと「申し訳ありません、すぐ代わりをお持ちします」との対応に、「うん、よろしくね」と文句を言わず、いいお客様を演じる私たちでした。

ところが、代わりに出てきたビールを見た社長が「先生、変わらなそうですよ」と。

そうなのです、先ほどの物と変わらず、温いのです。

「普通の生ビール、頼みましょうか?」

「そうだね。」

これ以上は面倒だったので、普通のビールを頼んで、待っている間、骨付きソーセージに手を伸ばすと、温かいものが入ってくるモードの口になぜか冷たい物が・・・。

ソーゼージが冷たい!?とビックリしているうちに、普通の生ビールが運ばれてきました。

ジョッキは見るからに冷たそうに曇り、口にすると「おぉ~冷たい!」

「さっきの氷点より冷たいじゃないか。

100円高いあれは何なんだ!」

「ふざけた店ですね。」

「ホントそうだね。」

冷たい生ビールで気を取り直して、店内を見回すと〈アツアツ!ぷりっぷりの炙りカキ〉のPOPとともにカキの炙り焼きがディスプレイされていました。

「あれ、いきましょうか?」と言う社長に、

「そうね、頼もう、頼もう」とさっそく注文しました。

そして、期待して待つこと10分、待望のカキがやってきました。

「ちょっと待ってください。」

疑心暗鬼な顔の社長が殻に手を触れて言った言葉はもう信じられませんでした。

「冷たいですよ。」

「・・・。」

さすがに呆れたので、スタッフを呼び、「アツアツ、ぷりぷりって書いてあるけど、冷え冷えだよ、何なのこれ?」と言うと、またまた「申し訳ありません、すぐ代わりをお持ちします」と持っていきました。

それから5分、「すいませんでした」と持ってきたカキに今度は私が手を触れました。

「冷たぁ~・・・」

目の前の社長の顔は斜めになりっぱなしです。

「どうなってるのココは?

やり直してなんで冷たいの?

ハイもう一回!」

もう体育会系のノリのコーチです。

3回目のカキがやってくるころにはこの店の悪口がつまみになっていました。

そして3回目、やっとアツアツかと思ったら、なんとまた冷たい。

「あのさあ、誰か君かボクを恨んでいるやつがいるんじゃない。

もうこれは、嫌がらせだろう。」

「もう、出ましょう、金払ってこれ以上ひどい目に会うのはごめんです。

被害は最小限に留めましょう。」

「そうだね、身に覚えのない嫌がらせは逃げるに限る。」

こんな会話、飲食店で交わしたことは記憶にありません。

社長が清算を頼んでスタッフにカードを渡してトイレに席を立ちました。

ところが驚きがまた起こったのです。

社長がまだ戻らない状態の中、受け取ったスタッフがレジ作業を終えて戻ってくるなり、なんと私に「サインをお願いします」と言ったのです。

さっき、渡したばかりなのに、カードを渡した相手も覚えてないのか、カードの相手と違うひとにサイン求めるっていいのでしょうか。

大事な接待だったらどうするのでしょう。

そして、そして、さらに、会計を終えて下駄箱から靴を出したところでトドメでした。

靴を履こうと靴ベラを探したところ、なんと土足で歩く2~3歩先のところに靴ベラの置き場所があるのです。

(とどかないじゃないかあぁぁ)。

スタッフが近くにいて、おそらくその様子に気づいているのに、手を差し伸べようとはしません。

靴下を汚しながら靴ベラを取りに行くその様子を「ありがとうございました」と笑顔で見送っているスタッフの姿を見た時、私には薄ら笑いにしか感じませんでした。

(最後の嫌がらせだあぁ。)

本人たちは何も悪いと思っていないのでしょうね。

店づくり・商品・サービス全てズレまくっています。

寿命は短いでしょう。

我々もズレないよう、時々診察を・・・。

ではまた。