石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その132

「なんだか去年あたりから急にお客さんの足が遠のいて、今年ははっきりとそれが数字にも出てきています。

なんだか怖い感じなんですけど、東京はどうですか?」

大阪の歓楽街、会社員のメッカ北新地の鉄板焼き経営者からの言葉です。

確かにこの10年ほどの間に随分と世の中の人たちのライフサイクルが変わったようです。

シチズンホールディングスが4月、全国のビジネスマン400人に聞いたアンケートの結果が朝日新聞「天声人語」でも紹介されていました。

20代から50代の会社員が1週間に何日、自宅で夕食をとるか。

答えは平均5.7日でした。「毎日自宅で」と回答した人が50%もいたとのことです。

1990年の調査では13%ですから、生活様式がバブルの頃とはずいぶん変化したことになります。

帰宅時間も変わったようです。

金曜日の帰りが遅くなる人が90年には75%もいたのに、今年の調査では35%。

遅いと感じる帰宅時間も、90年には23時が多かったのが、今年は21時にまで早まったそうです。

21時に帰れば、「あら、随分早いお帰りだこと、びっくり」と言われてしまう〈午前様、石田様〉だけが相も変わらずの人生を歩んでいるようです。

いいんだか悪いんだか・・・。

 

『世の中変われば業界も変わる。自分の店はどう動くか考えよう』

「居酒屋業界だけが売上を落としている、他の業種は上がっていますね」。

最近よく口にする石田の言葉です。

景気の回復基調が居酒屋だけには影響していないようです。

ただ本来は他の業種がもっと伸びていなければ、景気回復とは言えないでしょう。
なぜなのでしょう。

一言でいえば生活の多様化でしょう。

朝残業を奨励する企業が出たり、リゾート朝食がブームを起こしたり、高齢化により健康志向の食事が注目され、若者のアルコール離れが進む傾向や総じて暮らしぶりが手堅くなったご時世。

「家(いえ)飲み」もよく耳にするようになりました。

2009年あたりからです。

居酒屋でわいわいやるのも楽しいけれど、家でゆっくり飲むのも悪くない。

なんといっても安上がり。

弁当や総菜を買って家で食べるのは「中食(なかしょく)」です。

家飲みが広がれば、外食は用無しです。

そこに今度は、飲食業界をターゲットにするようにコンビニは調理品を増やし、最近ではイートイン設備も増やしていこうとしています。

そんな中、飲食店の数はほぼ横ばいです。

業態開発の努力をする方々は扱わなかったアルコールに進出し、チョイ飲みのメニューを開発、客数アップに必死です。

何も手を打たない店の売上が上がるわけありません。

餃子専門の居酒屋店が好調のニュースが聞こえてきましたが、なるほどとも思いました。

餃子に特化することで品質の安定をはかり、オペレーションが単純なためスピード化が図れます。

どのテーブルにも餃子が賑やかに置かれた様子はお客様に非日常を感じさせる空間にもなっています。

串揚げ専門店もしかり、海鮮焼き専門店も同じく、ステーキの立ち食いも例外ではないでしょう。

従来の居酒屋や食堂レストランのメニューの中の一品、カテゴリーに過ぎなかったものをお客様のニーズではなくウォンツで勝負している方々は成功しているのです。

「会社員がたくさんいるからランチをやろう」ではダメなんです。

同じく繁華街だから酒が飲める居酒屋をやろうではニーズを見ているだけです。

今そこにいるお客様が何をしたいのか、どう過ごしたいのか、ウォンツを探る動きをしなくてはいけない時ですね。

ではまた。