石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その157

「いつも手早くやるねえ。

大したもんだ、いよっ、料理上手!」

「ご飯食べる時だけは気を使うのね。

どんだけ食べるの好きなの?」

「はい、一番の幸せな時ですから。」

という私の素直な気持ちは恐らく普通のヒトも皆持っているのではないでしょうか。

お腹がすいて何か食べたいと思った時、美味しいものが目の前に提供されることほどありがたいことはありません。

世の男性がこの人とずーと一緒に居たいと思う女性(最近は逆も)の条件のひとつに《料理が上手い》というのがあるということはうなずけます。

私事ですが、若かりし頃、料理をごちそうしてくださるという女性の家に招待され、ウキウキして出かけたことがあります。

到着した私を「ちょっと待って」とテーブルに案内したその女性は少し汗ばんでいました。

台所で奮闘している様子がなんとなくわかり、私は申し訳ないようなありがたい気持ちで、なんだか幸せな気持ちになったのを覚えています。

ところが、料理はなかなか出てきません。

1時間程待たされた頃でしょうか、腹ペコの私の心は変わり始めました。

(何やってるの?

冗談だろ。

勘弁してくれよ!)。

心がどんどん不機嫌モードになっていったのです。

2時間を超えるかという頃、

「お待たせしました!

2時間でできると思ったら4時間もかかっちゃった」という言葉とともに、提供された皿には、サラダとちょっと焦げたコロッケが2個載っていました。

食べている間、(何で4時間、何で、何で、コロッケに何で4時間)という言葉が頭の中で繰り返され、失礼ながら料理を味わう気が失せてしまっていました。

あの彼女は、どうしているか、料理は上達したのかなぁ。

お金をいただくお客様に料理を提供する飲食店では・・・。

 

【提供時間が遅いということがクレーム第1位、効率を上げよう】

「今月のお客様の声にどんなことがありましたか?」という私の質問の答えに「提供時間が遅いという声がありました」と多くの店から返ってきます。

私がこの仕事をするようになってから変わらぬ反応です。

でも、お客様に手作りのまごころのこもった商品を提供しようとすると提供スピードを上げるために作り置きはできません。

たくさんのお客様がいらして繁盛すればするほど時間がかかってしまいます。

お客様がたくさんやってきてうれしいけど、品質が落ち気味になり、提供時間がかかってクレームになるのは耐えられない。

ドライブインから、いっそのこと評判の良い「ポテトフライ」と「ハンバーガー」だけで店をやろうと1950年代前半、この2つの商品とドリンクだけでカリフォルニア州サンバーナーディーノで店を始めたのがマクドナルド兄弟です。

2つどちらの商品も注文から30秒で最高の状態で出せるよう、店の建築前から敷地にチョークでキッチンシステムを書いてスタッフの動きをシャドウでトレーニングしました。

開店後は破格の売上を記録し、兄弟2人は大成功を収めたのでした。

その後、1954年に8台ものミキサーを注文したことが縁で、しがない営業マンだったレイクロック(後の米ハンバーガーチェーン「マクドナルド」の創業者)と出会います。

最低価格(当時15セント)ですべての製品を良い状態で提供できる体制を作り出していた脅威はレイクロックの人生も変えてしまいました。

自分の店の商品を2品だけにするなどという、乱暴なまねはどうかと思いますが、どうしたら品質の良い商品を1秒でも早く提供できるかを日頃の慣れたオペレーションを否定して考えてみるのも必要ではないでしょうか。

今夏、映画「FOUNDER(ファウンダー)」が公開されます。

マクドナルド兄弟とレイクロックの創業時が描かれていますから、飲食店としても事業家としても勉強になりそうです。

ご覧になってはいかがでしょうか。

ではまた。