石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その174

「今日はお刺身このままでいいかしら?

お皿に移し替えてないんだけど。」

私の前に、スーパーから買ってきた刺身がトレーのまま食卓に置かれました。

「全然気にならないよ。

平気平気。」

いつもは食卓に並ぶ出来合い物は気を使い、器に移し替えて出してくれる奥神様も疲れた時や調子が悪いときはこんな風に食卓を用意します。

私としては全く気にならないのですが、本人は手抜きと感じる後ろめたさがあるのでしょう。

当たり前のように出すことはありません。

いい奥さんです。 

「大丈夫だよ、わざわざ移し替えなくても。

洗い物も増えるしね。

OK OK。」

「そうよね、味が変わるわけじゃないんだから。

楽させてもらうわ。」

「いやいや、奥様、トレーのままでもいいんですけど、味は変わるんですよ、味は。

気分的に。

だからこそプロのお店は器にも気を遣うのですよ。」

(心の声)

皆様のお店はどうでしょう。

 

【器は料理の着物(北大路魯山人)】

最近のトレンドである、ちょい飲み・ファミ飲みを体験しようとあるチェーン大手のファミレスに足を運びました。

お決まりの生ビールを注文、いくつかのつまみを頼んで待つこと3分、生ビールが運ばれてきました。

さすが、マニュアル化された大手は提供が早い。

では乾杯、とジョッキを手にして驚きました。

「軽い、軽いなあ、これ。」

なんと、プラスチックのジョッキだったのです。

口にして更に顔をしかめました。

おいしくないのです。

ドリンクは間違いなく、口当たりと臭いで味が変わります。

プラスチック臭が邪魔をしておいしくないのが商品担当者はわからないのでしょうか。

いや、わかってはいるのでしょう。

わかってはいても、提供価格や人件費、材料費の高騰、さらに消費税増税対策を考えて、器代を節約したのでしょう。

でも安さがサービスという考え方には限界があります。

レストランは非日常の場であり美味しいものを提供することが使命です。

儲けだけを優先しては本末転倒です。

商品を不味くしたり、見栄えを悪くしては何にもなりません。

だいいち働いている従業員がプライドを持てません。

ビールの後にワインを頼んだのですが、やはりプラスチックグラスで提供されました。

なんだか「あんたら安い金で飲んでるんだからこれで充分だろ」と言われてるようで寂しい気持ちになりました。

その後、顧問先でこんなやり取りがありました。

「最近の100均はすごいですね。

この皿、100円ですよ。

試しに買ってみたのですが、この皿を変えようと思います。

いいですよね?」

「社長、やめましょう。

この地域にある100均の物ということは、地域のお客様も行ってるはずです。

各御家庭にあるかもしれませんよ。

同じものが店で出されたら興ざめですよ。」

効率や利益は大切です。

でもお客様の心を大切に考えることはもっと大切です。

お客様の足をお店に向かわせるのは店の真心。

居心地の良いお店を作るためのことを日々頑張りましょう。

ではまた。