石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その212

奥神様が意地悪な笑みを浮かべて近づいていてきました。

「お食事が終わったのに、いいんですか?

何かお忘れじゃないの?」

「どうした?どうした?」

「どうしたじゃないわよ、薬は?

自分の身体のことなのに、よくも毎度毎度忘れるわね。」

「今、飲もうと思ったところだったんだよ。

忘れたわけじゃない。」

「よく言うわよ。

はい、お水。」

まあ、いっちょ前の大人になると、子供のようなミスは認めたくないのでつい言い逃れしようとしましたが、噓をつくと言い訳できないのが社会というもので。

ビジネスにおいては損得利益に直結するだけに時に大きな問題になりますね。

我々の業界に関係ある食品にも今回、嘘が発覚したようで・・・。

【信用・信頼は嘘ですべて失われる】

新型コロナの感染状況は、前回、油断は禁物と書きましたが、その通りの展開となり、全国35県に〈まん延防止措置〉が発出されました。

東京は1日あたりの感染者が2万人を超える日もあります。

そんな折、ため息の出るニュースが飛び込んできました。

〈輸入アサリの「熊本産」偽装問題〉です。

平均単価1キロ当たりが輸入品は200円前後ですが国産の熊本産と偽って600円で販売し、400円程度の価格差から、この「利ざや」は年140億円を超える計算になり、偽装ビジネスとして告発されたのです。

「あれは酷いですねぇ、砂浜にチョットばらまいただけで育てたことにして、国産と名乗るなんて畜養の定義も守ってなさそうだし、組織的な嘘ですよね。

ウチの膳ものにアサリの味噌汁をつけていましたが、しばらく使えませんよ。

お客様に何を言われるかわかりません。

代わりにシジミにしたのですが、これも危ないかもしれませんね。

メディアも映像を何回も流しているので、お客様も気にしますからねえ。」

顧問先の社長はそう言って、会議で嘆いておられました。

この手のニュースは広がりを見せるもので、以前にも餃子の段ボール肉混入事件や牛肉の産地偽装などがメディアを賑わせ、ついには飲食業界における偽装事件に発展しました。

〈船場吉兆ささやき女将事件(2007年)〉で翌年閉店廃業にまで追い込まれたのは記憶に残っていますね。

当事者のみならず、従業員も職を失ってしまったわけです。

今回も案の定、アサリ偽装の後、老舗のウナギ専門店による中国産ウナギの偽装・スルメイカ偽装(食品加工業)・カナダ産小豆偽装(食品加工業)など、報道で見かけました。

飲食業界に波及しないことを祈るしかありません。

どちらにしても偽りのビジネスが事を成したことはありません。

生きるため、生活のためとはいえそのことは必ず跳ね返ってくるものです。

また、自分だけにバチが当たるならまだしも、他の人にまで災禍が及ぶ場合もあります。

先ほどの会議の帰り道、食品スーパーを覗いてみましたが、アサリが山積みで全く売れていません。

近くに店員さんがいたので「アサリはやっぱり売れませんか?」と聞いてみました。

「そうなんですよ、まったく売れていません。

値引きしてもさっぱりですよ。

しょうがないので更に値引きしたんですけど、どうされます?」との答えでした。

「いや、結構です」そう言ってその場を去りましたが、なんとも消費者は正直なものです。

しばらくは影響が続くでしょうね。

偽装には産地偽装の他にも消費期限や賞味期限の偽装もあります。

成分偽装なども含めれば、まだまだ発覚していないものが多くあるに違いありません。

〈わからなければいい〉と考える不届き者はいつの時代もいるものですが、発覚すれば、あっという間に信頼も信用も吹っ飛んでしまいます。

信頼や信用を取り返すのは容易なことではありません。

〈ささやき女将事件〉の経営者が新たに店を再開(別店名)できたのは7年後のことでした。

我々は自分のことはもちろん、お付き合いのある業者の方々への目配りも充分注意しなければなりませんね。

負けないでくださいね。

ではまた。